暁 〜小説投稿サイト〜
落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
番外編 平中花子の恋路
前編 甘く苦い思い出
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もし私がかわいい女の子だったら、これはこれで絵になる眺めだったかもしれない。だけど、私がこんなリアクションを取っても、滑稽なだけだ。
「……へぇ。武羽子さん、そういうモデルになりたいのか?」
興味ありげな口調で、彼は私の雑誌に注目する。
普通なら、「そんなわけないじゃない! バカじゃないの!?」と怒鳴るべきなんだけど、この時の私はそうはしなかった。
雑誌を見られたショックで彼の言い方に怒るどころじゃなくなったせいか、私は彼への怒りについて、水を掛けられたように冷静になっていた。
落ち着いて考えてみれば、彼は私の本名を知らないはずだし、態度にも悪気が感じられない。
「ブー子」呼ばわりするのも、単に他の呼び方を知らないだけなのかな……?
だとしたら、カッとなって喚き出した私がバカみたいじゃない。恥ずかしくてたまらないっ!
「そ、そうよ! あんたは笑うでしょうけど、『キレイになりたい』っていうのは女の子にとってはなくちゃいけない夢なんだからねっ!」
――だから、せめてものお詫びとして、正直に話してあげることにした。それに、醜い私を前にしてここまで友好的に接してくれる彼のことを、ほんのちょっぴり――信用したくなっちゃったから。
それでも、一度口にしてしまうと不安な気持ちになる。ここで彼に笑われてしまったら、「やっぱり言うんじゃなかった」と後悔することになるから。
「そいつはすごいな! アンタが雑誌に載ったら買うぜ、俺!」
でも、彼はものすごく感心したような顔で私を応援した。心配する私が間抜けなくらいに。
今さっき会ったばかりの彼の言うことを、ちょっと優しくされただけで信用してしまう。我ながら単純だとは思うけど、それでも私は嬉しくてしょうがなかった。
私は縋るように彼の笑顔を伺う。もしかしたら――もしかしたらだけど、彼ならなってくれるかもしれない。私の、第二の友達に。
「ほ、ほんとう?」
「ああ! ……あー、でも、雑誌に乗る前に痩せないとな。よし、俺がプロデュースしてやろうっ!」
「ええ!?」
「名付けて! 『武羽子さんダイエット&モデルデビュー大作戦』ッ!」
「だっさ! もうちょっとマシな名前考えなさいよ! ていうかブー子って呼ぶなー!」
「ぐはぁっ!? お、俺が一体何をっ……!?」
こうして、ちょっと失礼だけど、とても優しい男の子――船越大路郎との、毎日が始まった。
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