暁 〜小説投稿サイト〜
落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
番外編 桜田舞帆の恋路
第2話 女の闘い
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剣淵さんは何の事情も知らない船越君を照れ隠しで張り飛ばしてしまう。

 「ぼふぅぇあ!?」と間抜けな悲鳴を上げてベンチから転げ落ちる彼が、どこか微笑ましい。

 全く、罪作りよね、この人。人の気持ちなんてこれっぽっちも考えずに、誰かを助けて真人間に戻ろうとすることだけ頭に入れてる。
 こんな素敵な女の人に愛されてるのに、意識もしないなんて。

 ……それとも「幼なじみ」っていうのは、そんな想いにも気づかなくなるくらいに親しい間柄ってことなのかな。だとしたら、ちょっと疎外感。

「コホン……さて。その前にわたくしには成さねばならぬことがあります」

「成さねばならぬ――こと?」

 一度咳ばらいをした瞬間、彼女の凛々しい表情がより一層真剣なものになる。
 そこから感じる『気迫』のようなものに、思わず私は息を呑む。

「はい。大路郎様の通われている『宋響学園』。その象徴的戦士にしてスーパーヒーローである『生裁戦士セイントカイダー』と対戦し、勝利することです!」

 刹那、私とベンチから転落している船越君に衝撃が走る。

 セイントカイダーと戦いたい、ということは……!?

「なっ……本気か、美姫!」

「け、剣淵さん!? もしかしてあなた、ヒーローライセンスを!?」

 意外と言えば、あまりにも意外だ。
 まさか、この(恋愛ごとを除けば)慎ましい佇まいが特徴の彼女が、ヒーローを務めているなんて!

 船越君は剣淵さんがヒーローであることは知ってるみたいだし、驚いているのは現時点でセイントカイダーに変身する資格を保持している、私の「経験不足」を案じてのことだと思う。

 剣淵さんは得意げな顔で懐に手を忍ばせると、そこから一枚のライセンスカードを取り出してきた。

 カードには確かに彼女の名前と顔写真があり、ヒーローランクは「A」に達している。

「我が剣淵財閥が経営している、数ある企業や施設の内の一つ『剣淵水族館』。その専属ヒーロー『ドルフィレア』に変身するわたくしが、セイントカイダーとやらのお相手を致すのですわ」

「きゅ、急過ぎるわよ! そんな話、私は全然聞いてない!」

「あら? とすると、あなたが?」

 ハッと驚いた顔をする剣淵さんのあっけらかんとした態度に、わずかながら苛立ちを覚えた私は、上着のポケットから引き抜いたライセンスカードをズイッと彼女に見せ付けた。

「そ、そうよ! Aランクのヒーロー『生裁戦士セイントカイダー』こと桜田舞帆よ!」

「これは奇遇でしたね。まさか、わたくしが絶対に戦うべき相手が恋敵でもあったなんて」

「な! ち、違うわよ! 私は別にそんな……こと、なくもない……っていうか、今はそこじゃないッ! セイントカイダーに挑まなきゃいけない
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