暁 〜小説投稿サイト〜
落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
番外編 桜田舞帆の恋路
第1話 衝撃のニュース
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「卑怯でずる賢くて、お金しか後ろ盾がない――疫病神なんだから」

 独り言でそう呟いた途端、私はボロボロと流れる感情の渦を抑えようと目をつむり、前も見ずに駆け出していく。

 前を見るのが、怖くて仕方がないから。今の自分を、誰かが見ていると思いたくないから。

 しかし、そのささやか願いさえも、あっという間に打ち砕かれてしまう。それも、是が非でも見られたくなかった人に。

「うおっ! とと……舞帆?」

「えっ――あっ……!」

 嘘でしょ……? なんで、なんでよりにもよって……!

「どうしたんだ? お腹でも空いたのか?」

 涙でくしゃくしゃになった私の顔を見て、心配そうな表情になった彼は、真面目な顔でおバカな言葉を投げ掛けて来る。

 私は恥ずかしくて消えてしまいたくて、彼と顔を合わせることができなかった。
 目を伏せて、ただ両手で涙を拭おうとすることしかできない。

 我ながら、まるでおもちゃを取られた子供みたい。

「……よくわかんないけど、ほら、こっちおいで」

 いつものように困った笑顔を浮かべる彼は、私の手を引いて最寄のベンチに腰掛ける。
 その右隣に座る私の頭を、子供をあやすようにそっと撫でた。

「ハンカチならあるし、好きなだけ泣くといい。なんかあったんだろ? 無理に聞く気なんてないけど」

「うぐ、ひぐっ……!」

「――『泣く』って、いいよな。壊れそうになる心を、守ってくれるんだからさ」

 どこか遠いところを眺めているような彼の目を見れば、その視線の先に誰がいるのかがすぐにわかる。
 きっと、かつての彼自身を見ているのね。

 お母さんから聞いてる。
 みんなからの激励を貰った彼は、一時ひどく泣いたらしい。

 彼の泣く姿なんて見たことも想像したこともなかった私にとって、その話は衝撃的だった。

 そんなことがあったからこそ、彼は「泣く」ことを肯定するんだと思う。泣くことで、どれほど気持ちが楽になるのかをよく知っているから。

「大路郎様。そちらの方は?」

 その時だった。私の隣に座る船越君の前に、同い年くらいの女の子が現れたのは。

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