暁 〜小説投稿サイト〜
落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
番外編 栄響学園生徒会執行部
後編 埋まらない溝
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けど。

 ――それでも、気持ちだけは本物なんだ。
 なら、俺もそのくらいの心構えってものを用意しとかないと、彼に失礼だ。

「あれまぁ〜、辻木君も船越君も初対面早々にやる気満々なわけ?」

「まぁな」

 目を合わせずに会計さんの問いに答え、俺は副会長に視線を戻す。

「掛かって来るなら、いつでもどうぞ」

 人差し指で副会長を指し、それを自分の顔に向けてちょいちょいと振る。

 挑発は――いや、ゴングはそれで十分だった。
 「力試し」の始まりのものとしても、その終わりのものとしても。

「調子に乗るなァァァァァッ!」

 般若の形相で、一気に「面」の要領で竹刀を振り下ろして来る。

 避ける必要はない。

 かといって、脳天に食らってやるわけでもない。

「――むぅッ!」

 俺の短い唸り声と共に条件反射で突き上げられた、右手の拳。

 久々にパンチなんて打ったせいか、自分の迎撃を含めた全ての動作が、一瞬のことのように見えた。

 喧嘩なんて弌郎の件以来……つまり一年振りだからブランクがあるんだろう。

 自分のアッパーが、垂直に振られた竹刀をブチ折る瞬間も見逃すなんてな。

 ……俺の動体視力も、落ちぶれたもんだ。
 まぁ、見えなかったのは他の連中も同じだったみたいだし、今は別にいいか。

「たは〜、なんだい今のは!? おったまげたよ!」

「や、やっぱり船越君ってすごい……!」

 見物客二名の反応を一瞥し、俺は副会長の方へ向き直る。

「そんな……そ、そんなバカな!」

 自分の手に握られた、無惨に裂けた竹刀を目にしてワナワナと震えている。
 俺は僅かにに痛めた自分の右拳をさすりながら、彼に声を掛けた。

「俺のことが気に食わないなら、それでいい。悪いのは、お前に認められなかった俺だ」

「……!」

 俺の言葉にハッとして上げられた彼の顔は、現実を無理矢理突き付けられたせいで、ひどく歪んでいた。

 認めたくないのに、認めざるを得ない状況にあることへのもどかしさが、表情を通して放出されているような錯覚を覚える。

 まるで、昔の俺を見ているようだった。

 ひかりを――ひかりの幸せを奪われ、自分の存在価値を見失いかけていた、あの頃の俺を。

「来年でもいい。卒業式が終わるギリギリでもいい。いつか、この学園を出ていく日が来る前に、俺はお前に認めてもらいたい」

 それは俺個人の願いであるし、舞帆に願われたことでもあった。

 俺は変わりたい。そして、有り得たはずの暮らしを取り戻したい。

 だから、不良から完全に足を洗うために――彼にも認められたい。

 その気持ちに、嘘はない。あるはずがない。

「……ふ
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