暁 〜小説投稿サイト〜
落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
番外編 栄響学園生徒会執行部
後編 埋まらない溝
[2/4]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
けど。
――それでも、気持ちだけは本物なんだ。
なら、俺もそのくらいの心構えってものを用意しとかないと、彼に失礼だ。
「あれまぁ〜、辻木君も船越君も初対面早々にやる気満々なわけ?」
「まぁな」
目を合わせずに会計さんの問いに答え、俺は副会長に視線を戻す。
「掛かって来るなら、いつでもどうぞ」
人差し指で副会長を指し、それを自分の顔に向けてちょいちょいと振る。
挑発は――いや、ゴングはそれで十分だった。
「力試し」の始まりのものとしても、その終わりのものとしても。
「調子に乗るなァァァァァッ!」
般若の形相で、一気に「面」の要領で竹刀を振り下ろして来る。
避ける必要はない。
かといって、脳天に食らってやるわけでもない。
「――むぅッ!」
俺の短い唸り声と共に条件反射で突き上げられた、右手の拳。
久々にパンチなんて打ったせいか、自分の迎撃を含めた全ての動作が、一瞬のことのように見えた。
喧嘩なんて弌郎の件以来……つまり一年振りだからブランクがあるんだろう。
自分のアッパーが、垂直に振られた竹刀をブチ折る瞬間も見逃すなんてな。
……俺の動体視力も、落ちぶれたもんだ。
まぁ、見えなかったのは他の連中も同じだったみたいだし、今は別にいいか。
「たは〜、なんだい今のは!? おったまげたよ!」
「や、やっぱり船越君ってすごい……!」
見物客二名の反応を一瞥し、俺は副会長の方へ向き直る。
「そんな……そ、そんなバカな!」
自分の手に握られた、無惨に裂けた竹刀を目にしてワナワナと震えている。
俺は僅かにに痛めた自分の右拳をさすりながら、彼に声を掛けた。
「俺のことが気に食わないなら、それでいい。悪いのは、お前に認められなかった俺だ」
「……!」
俺の言葉にハッとして上げられた彼の顔は、現実を無理矢理突き付けられたせいで、ひどく歪んでいた。
認めたくないのに、認めざるを得ない状況にあることへのもどかしさが、表情を通して放出されているような錯覚を覚える。
まるで、昔の俺を見ているようだった。
ひかりを――ひかりの幸せを奪われ、自分の存在価値を見失いかけていた、あの頃の俺を。
「来年でもいい。卒業式が終わるギリギリでもいい。いつか、この学園を出ていく日が来る前に、俺はお前に認めてもらいたい」
それは俺個人の願いであるし、舞帆に願われたことでもあった。
俺は変わりたい。そして、有り得たはずの暮らしを取り戻したい。
だから、不良から完全に足を洗うために――彼にも認められたい。
その気持ちに、嘘はない。あるはずがない。
「……ふ
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ