暁 〜小説投稿サイト〜
落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
本編 生裁戦士セイントカイダー
第22話 ヒーローの名乗り
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と幸せだったはずだ。
そうでないなら今……こんなに嬉しい気持ちは湧いて来ない。
ずっと抱えていた負債を、一気に解消する最大のチャンス。それが、この戦いだ。
俺は舞帆がたどるはずだった戦いに身を投じるためだけに、ヒーローになった。
勝ち目のない戦いに彼女を晒さない、唯一の手段だったからだ。
だから彼女のヒーローとして、最後の名乗りを、俺は上げたい。
それが少しでも舞帆の支えになるとしたら、それはきっと意味のあることになるから。
思えば、俺はここに至るまでに多くの人から助けてもらっていた。
母さんは、俺がどんなに荒んで、忘れてもらおうとしても、決して見捨てずにいてくれた。俺に代わって、ひかりを支えてくれた。
平中は、俺達とは本来関係ないはずの、普通の女の子だったのに、俺との縁だけでここまで連れて来てくれた。
ひかりは、俺のせいで死にたくなるような思いをしたはずなのに、それでも俺を憎むことなく、「絶望」しかなかったはずの未来を瑳歩郎という「希望」に塗り変えて、俺に勇気をくれた。
達城は、俺が無理にヒーローになると決めても、決して跳ね退けることなく、チャンスを与えてくれた。今思えばそれは俺に舞帆の代役が務まるかどうかを試す意図があったんだろうが、それでも最後には本当に俺を信じて、この力をくれた。
そして……舞帆は、ひかりのことでやさぐれていた俺を救い上げるために、ひたすら手を尽くしてくれた。
俺が幸せを掴むこと――元の、当たり前の暮らしを取り戻すことを、望んでくれた。
みんな、俺を支えてくれた。
俺を信じて、頼りにして、助けになってくれていたんだ。それは、舞帆も同じだったのかも知れない。
俺がセイントカイダーをやっていたと知った時、誰よりも反対していた彼女は今、ただ家族と共に固唾を飲んで見守っている。
止めようとはしていない。
もしそれが、俺を信じてくれている証なら、俺を頼ってくれている意味なら。
――俺は、今。彼女だけのヒーローだ!
「生徒の手により裁くべきは――世に蔓延る、無限の悪意」
腕を派手に振り、俺は腰を低くして、身構えるようにポーズを決める。
生裁重装の時では体が重くて出来なかった、本来あるべき姿である今だから出来る――名乗りのポーズ。
舞帆のヒーローとして戦い、勝つことを約束する構えだ。
俺は掌を狩谷に向け、これから成敗してやるといわんばかりの威勢で声を張り上げる。
みんなの支えから成り立つ、俺の力で。
「――生裁戦士、セイントカイダー……!」
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