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落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
本編 生裁戦士セイントカイダー
第21話 ラーカッサの猛威
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空気が、変わった。
今のこの瞬間、俺が感じたことをそのまま言葉に形容するなら、それが一番相応しいだろう。今までのラーカッサとは、明らかに気迫が違う。
その威圧に一瞬、硬直したこと。それが命取りとなった。
「がッ――ああッ!?」
冷たい激痛と共に、白い戦闘服が瞬く間に赤く染まる。まるでラーベマンのように。
その傷口は、五つの線の形になっていた。
光線銃より速いスピードで間合いを詰めた彼女の爪が、俺の胸をザックリと裂いたのだ。
目にも留まらぬ速さで攻撃されたのはこれで二度目だが、受けた傷の重さと痛みは段違い。
――当たり前だ。向こうは本気になってる上に、こっちは鎧を外して身軽になっている。ダメージが増えるのは当然の結果だ。
達城も、この身体的なリスクを苦慮して、今まで俺にも教えなかったんじゃないか。なんでこんな簡単なこと、少しの間とはいえ忘れてたんだ!
俺は自分に腹を立てると共に、後ろを振り返った。桜田家を巻き込んでいないか、不安になったからだ。
そこには、家族三人で身を寄せ合う彼らの姿があった。
みんな、見たことのないセイントカイダーの姿やラーカッサの本気を目の当たりにして、呆気に取られているようだった。
その中でも、特に舞帆は心配そうな表情でこちらを見詰めている。
――なにをやってんだ、船越大路郎!
舞帆を守るって、もう何度決めたと思ってる! さっさと立て、立って戦え!
俺は自分自身に無茶苦茶に喝を入れて、セイトサーベルを杖に立ち上がる。
「さて、とっておきの本領はまだ? それとも――もうネタ切れ?」
「だな。……だから使いまわしだッ!」
ホルスターからの早撃ちで、俺はセイトバスターを撃つ。
深紅の光線がラーカッサの胸に真っ直ぐ飛んでいく。
だが、彼女はその射速さえ凌駕していた。
一瞬だけ照準から姿を消したかと思うと、次の瞬間には俺の目の前で不敵に笑っていたのだ。
「そのネタ、もう古いんだよ!」
鋭い回し蹴りが俺の脇腹をえぐり、更に鮮血が辺りに飛び散る。
俺が流血してうめき声を上げる度、後ろの方から悲鳴が聞こえた。
「ああ、そうだ。アンタ、確か所沢に背中を刺されてたわよね」
「――!」
たったその一言が、俺を凍り付かせた。
これからどんな攻撃をされるのか。
それを想像して総毛立った頃には、彼女は既に俺の背後を取っていた。
「ダメよ、怪我人が暴れちゃあ」
皮肉と共に、ラーカッサの拳に内装された弾薬が破裂した。
俺の傷を、根掘り葉掘りえぐり尽くすように。
「……か……ッ……!」
悲鳴は、聞こえなかった。
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