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落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
本編 生裁戦士セイントカイダー
第12話 最低最悪の兄弟喧嘩
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なった。
「ぶッッッ潰す!」
俺は自分の触れた手で弌郎のヒーロー能力のスイッチを切ったと認識した途端、一気に地を蹴って奴を押し倒した。
「クソッ! 放せクソガキ! 俺は男とヤる趣味はねぇぞ!」
「俺にはあるねぇ! 殺る趣味ならなァ!」
俺は両足の膝裏で奴の両腕をガッチリと挟み、胸のスイッチを押せないようにした。
そしてひたすら、拳を声がする正面に何度も叩き付ける。
顔や身体に、返り血が掛かる感触が伝わる。
「クソッ! がふっ! あの、ひかりってクソビッチも逃げやがるし、どいつもこいつも、俺の邪魔を――げふっ!」
目もろくに見えず、耳でしか弌郎を追えない俺は、殴ることに必死になる余り、ひかりを罵倒する台詞しか聞こえてこなかった。
それほどまでに、俺は狂っていた。そして、ひかりを馬鹿にした言葉が、ますます火に油を注いでいく。
「無駄口いらねーからさっさとくたばれェェェエ!」
俺が窓ガラスを割った時に散らかった破片を掴み、弌郎に向けて振り下ろした。
――振り下ろしたつもりだった。
破片を握っていた手を、何かに噛み付かれていると気付くまでは。
……いや、何かではない。女以外にこんなことをする奴はいないのは明白だった。
俺の腕を噛む歯の感触が離れると、彼女の荒い息遣いが聞こえてくる。
腕に噛み付いて止めるとは、おやじ狩りに絡んだ時といい、無茶苦茶なことをする女だな。
「――もういいよ、やめてよ」
これまでに聞いたことがないくらい、悲痛な声だった。
戦場に巻き込まれ、兵士に命乞いをする民間人のように、その縋るような涙声は、切実なものに聞こえた。
「お願い。お願いだから……!」
何の事情も知らないから、そんなことが言える。
しかし、何の事情も知らないからこそ、今の俺達がとてつもなく異常なのだと、彼女は警告していたんだ。
「それ以上は――もう、ダメ。お願い、だから」
懇願する女の声に、毒気を抜かれたのか――俺は破片を握る手の力を失い、だらりと腕をぶら下げた。
やがて騒音を聞き付けた病院の関係者らがやってきて、事態は収拾がついた。
弌郎や、奴とつるんでいた男達は全員検挙され、俺は女が連れ込まれた病院とは違う所へ入院した。
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