暁 〜小説投稿サイト〜
落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
本編 生裁戦士セイントカイダー
第7話 俺は俺として
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知られたくない人物に知られることになるようだ。

「……舞帆」

「な、なに?」

 どうせバレるんなら、ヒーローらしくカッコつけちまおう。
 俺は怯えるように身をすぼめる彼女の肩をそっと抱き寄せて、その耳元に優しく、強く囁く。

「お前にも、平中にも、俺が力になるから。だから、お前はそのままでいてくれ」

 その言葉に、可愛らしく頬を染める舞帆。
 いつまでも見ていたい姿だか、今は余韻に浸る暇すらない。

 俺は身を起こしてセイサイラーに飛び乗り、彼女が見ている前であの赤いボタンを強く押し込んだ。

「……セイントッ! カイダアァアッ!」

 鋼鉄の鎧が全身を締め付けて、体中の神経が悲鳴を上げる。

 意識さえ僅かに薄れるほどの痛みの中で、何度これを味わえばいいのかと、俺は心の奥でひっそりと嘆いた。

「……うそ」

 自身の身長を凌ぐ大剣を振り上げ、異形の猛牛と相対する俺の姿に、舞帆は我が目を疑っている。

 俺が評するには勿体ないくらいに美しく整った顔も、恐怖と驚愕で痛々しく引き攣っている。
 それは、やっと状況を飲み込めてきた平中も同じだった。

「――俺が、セイントカイダーだと」

 機械仕掛けの仮面越しに開いた俺の口から発する言葉に、舞帆はビクリと肩をすぼめた。

「知ったら、お前は軽蔑するだろう。幻滅するだろう」

 俺の言葉に、彼女は答えない。いや、俺には答えを聞くつもりはなかった。
 ただ、正体を明かした以上、伝えたいことがあるってだけの話だ。

「それでもいい。それでもいいから、今は……ヒーローなんて抜きにして、ただの同級生を見守っていてくれ」

 ここは学園じゃない。このヒーローが、セイントカイダーが関与すべき戦いじゃない。

 だから、ここに立ってるのは、彼女達を守ろうってバカは、ヒーローなんかじゃない。

 船越大路郎っつー、ただのガキだ。

 だから、敢えてヒーローとしての名乗りは上げない。
 俺は、俺として――戦う。

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