第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
六十三話 百鬼夜荒 陸
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ない程である。
そして――――
赤い膜に囚われていた一匹の妖怪の身体が突如拉げ、まるで握り潰されるかの様にその体積を減らし小さな肉塊へと変わり果て灰となって散った。
それを皮切りにした様に彼方此方で同じ現象が起き阿鼻叫喚が響き渡る。
封印とは単純に言ってしまえば『抑え付ける』事である。
つまり“抑え付けられる者”が抑え付ける力に耐えられなければ潰されるのは道理。
たかが封印と侮れば待っているのは――――“死”である。
六色十二の光球は無数の妖怪達を封印した今尚勢いに衰えは見えず、遂にその矛先を天上のナハトへと向け獲物に襲い掛かる獣の様に空を翔て行く。
「嘗めるでないわッ!小童ッ!!」
ナハトの叫びと共に彼の身体から漆黒が溢れ出し、暗闇を更なる暗黒で染め上げる。
天上を埋め尽くすかとも思える程の砂鉄の鉄色にその身を隠したナハトを追い、十二個の光球達は夜天に広がった黒に次々と飛び込み姿を消した。
それとほぼ同時に綺羅目掛け、彼の直上から巨大な影が流星の如く疾駆する。
それは砂鉄の闇に身を沈めた筈のナハトであった。
ナハトは瞬時に綺羅の術の危険性と限界を看破していた。
効力は言うに違わず厄介極まりないモノであるが、あくまであの術は綺羅の意志で操る類のものであり、自立して動いている訳ではない、と。
そしてあれ程の術ならば使用中に他の術の発動は出来まい――――そう確信していた。
そしてナハトの分析は的を射ており、『夢想封印』の最大の隙は使用中の術者そのものである。
故に今の綺羅にナハトの突撃を防ぐ術は無く、そもそもにおいて如何な存在であれ疾風の様な速度で迫る彼の巨体から生み出される破壊力を防ぐ事そのものが困難部類に入るのだから。
ナハトにすれば顎を広げ、ただ閉じるだけでも――
その鋭い爪で裂くだけでも――
ただ身体をぶつけるだけでも殺せるちっぽけな存在。
そんな取るに足らない――――と思っている者にナハト自身知らない内に意識を奪われており――――
見逃してはならない脅威の事を数瞬とはいえ失念していた。
必滅の権化となったナハトが綺羅に向け迫り――――
その流星に向け極彩色の彗星が横合いから鋭い槍の如き一撃となって突き刺さる。
「ゴッ!ガァァアアァァァァッ!!」
ナハトの苦悶の叫びと光の軌跡を空間に刻みながら、極彩色の槍はナハトを地上へと叩きつけ、暗闇の大地に天まで届くよ
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