第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
六十三話 百鬼夜荒 陸
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儂を否定したければ言葉を飾らず力を持って押し通せ!愚か者ッ!!」
ナハトはそう吐き捨てると同時に口から砂鉄の濁流を放つ。
綺羅と幽香は上空へと飛び上がりその攻撃を退避し、目標を失った黒い暴威は大地を喰らうかの様に暴れ回り散々に貪った。
「…アイツの言う通りね、アンタのの言いたい事も分からなくないけど…今は忘れておきなさい。
そうじゃないと……死ぬわよ?」
幽香の諭す様な、叱る様な、そんな言葉に綺羅は自身の心を抑え付ける様に強く拳を握り締める。
圧倒的不利な戦場で余計な思考は死を招く――――幽香の言葉は実に正しい。
最も……正しいからと言って納得出来るかは別問題であるが。
「……すみません」
綺羅は絞り出す様にそう一言だけ紡ぐと、ゆっくりと目を閉じる。
時間にすれば一、二秒ほどで再び開かれた彼の瞳には迷いは見えず力強さが宿っていた。
「……貴方の言う通り、今は力で押し通しましょう!」
綺羅が胸の前で音を立てて合掌すると、彼を中心に山吹色の霊氣が迸り、宛ら太陽の様に夜闇を照らし出す。
そしてその太陽の輝きから直径二m程の六色十二個の光球が生まれ出で、彼を中心に円軌道を描き六色の軌跡を闇色の空間に奔らせる。
綺羅の間近に居た幽香を始め、ナハトや数体の妖怪達はその光球の危険度を直感で感じ取り本能的に距離を取ろうと動き出す。
しかし彼等の行動よりも早く、光球が弾かれたかの如く周囲へと放たれた。
光球は流星の様に、そして疾風の様な迅さで空間を翔て行き進路上に居た妖怪達を悉く飲み込んでいった。
だが光球に飲まれた妖怪達に然程の変化も起こってはいなかった。
吹き飛ばされる所か傷さえ負っていない。
変化といえば飲み込まれた光球と同じ色の膜に包まれている位なものだ。
そのそれぞれ六色の膜に包まれた妖怪達はいきり立った。
見かけ倒しか!焦らせやがって!――――吐いた言葉は多種多様であったが“怒り”という一念のみは共通しており、その怒りをぶつけようと綺羅に向け殺到する――――
つもりだった。
しかし彼等の意志に反して身体が全く動かない。
まるで巨大な掌で握り締められているかの様に。
『夢想封印』
綺羅が使用した術の名である。
名前の通り封印術の一種であるが、その効能は『対超常現象』に限定されている。
人間や物体には作用せず、妖怪や神、術法や神秘に対してしか効果はない。
しかしその効力は凄まじく、囚われた妖怪達は指先一つ……身動きは微塵も出来
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