第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
六十三話 百鬼夜荒 陸
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見ると――――
その地上目掛け漆黒の礫が驟雨の如く降り注いでいた。
それは天上のナハトが放った砂鉄の雨であり、『何人たりとも生かさん』という滅殺の意志が込められた兇意。
幽香が反応するよりも早く綺羅は懐から四枚の符を取り出し宙に放った。
すると四枚の符は二人の四方を囲む様に浮き、山吹色の輝きを放つ正方形の結界と化す。
その輝きは降り注ぐ鉄色の暴威を完全に遮断していたが、周囲を取り囲んでいた妖怪達は驟雨に飲まれ、まるで摺り下ろされる様にその身を消していく。
地上へと降り注がれた砂鉄の脅威はそれだけでは治まらず、今度は濁流となり綺羅の結界に向け押し寄せ、圧殺するかの様に取り巻いた。
その様は無数の大蛇が獲物を捕らえ絞め殺す風景を幻視させる。
その黒い蛇達に対し綺羅の結界は高速で回転を始め、その面積を瞬間的に膨張させると爆発するかの様に弾け、山吹色の暴風となって取り巻いていた脅威を消し飛ばした。
「ほぅ?人間風情が中々にやりおるな!」
ナハトは地上での結果にそう言葉を贈る。
彼にしてみれば、相手に対し賛辞を送ったつもりなのだろうが。
遠雷の様に響くナハトの言葉に綺羅は更地と化した周囲を見渡した後、強く彼を睨み付ける。
「仲間を何だと思っているんだ!貴方はッ!!」
綺羅の怒りの咆吼が周囲に響き渡り、一時の間その場に静寂が降りるが――――
「…ふ…フハハハハッ!」
その静寂はナハトの轟く笑い声によって蹂躙された。
「仲間とはな……貴様は“目的が同じだけ”の輩を仲間と呼ぶのか?
儂も此奴等もただ利害が一致しているにすぎん。
そもそも敵対者にそのような戯れ言を吐くとは……この戯けがッ!!」
戦場において相手方の事情に一々感化されるなど愚の骨頂である。
優位な立場から口を出すならば兎も角、明らかに不利な立場の者がそのような事を口にすれば、可笑しい以上に怒りの方が湧くだろう。
現に綺羅の隣に立つ幽香も彼の発言に内心呆れていた。
彼女にしてみれば勝手に同士討ちしてくれているのだから自分にとっては願ったり叶ったりである。
しかし当の本人が幽香の心情に気付ける筈もなく、上空のナハトに向ける視線は更に強くなっていた。
「如何な事情があれ轡を並べる者であれば仲間ではないですかッ!
其程の力を持ってして何故切り捨てるのかッ!!」
綺羅らしいその言葉に――――
「寝惚けた事を――――力を持つからこそであろうが!
力有る者が力無き者を蹂躙する、其れこそがこの世の摂理であり真理ッ!!
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