第百二十一話
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言ったところで、やはり大きいつづらの方は開けたくないのが人間の心情というもので。大小二つのつづらの前で、昔話から与えられた教訓など関係ないとばかりに、俺たちは醜い争いを繰り返していた。
「仕方ない……」
とはいえ、そこでいつまでも醜い争いをしているわけにはいかずに、俺が大きいつづらの方に――筋力値の差によって――行くことになった。どちらも開ける準備は万全となり、後は何が飛び出るか、といったところだ。
「じゃあ、いっせーのせ、で。どうぞ」
「いっせーの……せ!」
わざわざかけ声で合わせるまでもなく、ほとんどすぐ隣のためにタイミングを合わせることは容易で。俺とテッチはほとんど同時に大小二つのつづらを開けると――
「下がって!」
「ッ!」
――大きいつづらの中にいた『モノ』と目があった瞬間、俺は飛び退きながらもクナイを発して威嚇し、その隙に俺と『モノ』の間にテッチが割って入った。
「ダイダラボッチ……!」
テッチの呟きがこちらの耳にまで届く。その大きいつづらの中に入っていた『モノ』の正体――不定形の何物かで形成された巨人、ダイダラボッチ。とはいえこの地下ではそのスケールも相応なものではあったが、それでも俺たちの倍近いサイズを誇っていた。
「っ……ショウキさん!」
「ああ!」
その不定形ながら重量を持つ拳を、テッチが手早く展開した大盾で受け止めた。その間に側面から回り込むと、抜刀術の構えを取ると、次なる瞬間には一閃がダイダラボッチの身体を斬り裂いた――が、不定形の身体はすぐさま再生してみせた。
「……小さいつづらの方を!」
もう一撃か、テッチの背後に待避するか。その一瞬の思考をテッチの言葉が上書きし、小さいつづらの中に入ったオカリナ――『楽器』を見た。さらにテッチのシールドバッシュがダイダラボッチに炸裂し、ヘイトをあちらが受け持ってくれている間に、小さいつづらの中にあったオカリナを回収する。
「っつ……」
日本刀《銀ノ月》を鞘にしまいながらくすんだオカリナを回収したはいいものの、特に何が変わった様子はなく。こちらに無理やり転移させられてきたのだから、指定の楽器を入手すればまた転移出来るとも思っていたが、どうやらそんな上手い話はないらしい。
とりあえず、入手したオカリナをポケットの中に放り込んでおくと、ダイダラボッチを引きつけてくれているテッチの方を見る。いや、そちらの方から聞こえてきた轟音に、反射的に見てしまったというのが正しいか。
「っ!」
ダイダラボッチの振るわれる剛腕を、スキルによって巨大化した大盾が両腕ともに弾き飛ばされた。とはいえ削りダメージはあるものの、どうもダイダラボッチに有効な一打を与えているとは言い難く、不定形の
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