第百二十一話
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「何が……言いたいんだ?」
相変わらずの糸目を伏せたテッチの言葉に、何やら回りくどい意図を感じて聞き返すと、テッチは言い辛そうにこちらから顔を背けた。だだ意図せずしてキツい言い方になってしまい、こちらもバツが悪く謝罪する。
「悪い。でも、何か引っかかった」
「そうですね……クロービスは、私たちの、スリーピング・ナイツの仲間でした」
『仲間……でした……?』
スリーピング・ナイツの中では最年長らしく、いつも冷静だったテッチに相応しくない、どこか曖昧な言葉つかいだった。ただしその言葉は暖かさを秘めていたが、それは同時に懐かしさと悲しみが込められていた。
「はい。先に、いなくなってしまいました」
「…………」
ユウキから聞いたことがある。スリーピング・ナイツのメンバーは、重病でVR空間による治療を受けていると。テッチが言ういなくなる、というのは……わざわざ最後まで言わなくても、そういうことだろう。
「そのクロービスが、NPCとしてここにいる。これは……どういうことなんでしょうね?」
テッチの自嘲めいた質問に対して何か言い返すことは、俺にもセブンにも出来なかった。その問に対する答えは、誰も持ち合わせていないからだ。
「クエストを攻略しよう」
かつてスリーピング・ナイツがいた世界であるアスカ・エンパイアに、かつてスリーピング・ナイツの仲間だったクロービスの名を名乗るNPC。この関係性は、必ず偶然ではない何かがあるだろうが――今の俺たちには、分からない。
「クエストを攻略すれば、もっと分かることもあるはずだ」
「そうですね。ここで話しているよりは」
ならば俺たちに出来ることは、このクエストの攻略しかない。クエストの攻略とともに、恐らくはあの狐面のNPC――『クロービス』はまた現れる。その時にはっきりさせるしかないだろう。
「セブン。こっちはもう大丈夫だ、他のみんなのサポートを頼む」
『ッ――そうさせてもらうわ』
そうして結論づけると、その言葉を最後にセブンとの通信が慌てたように切れる。俺が先程『彼女』の幽霊に会った時、どうやら心肺系に少し異常が出ていたらしいので、恐らくは他のメンバーにもその異常が現れたのだろう。
――つまりみんなも、逢っているのだろう。彼ら彼女らの『幽霊』に。
「さて……」
「攻略ですね」
大蛇を鎮める為に必要な楽器がこの神社に封印されており、魔物や悪霊がはびこる中でその楽器を手に入れる。それがこのクエストの主目的であり、それを探していれば、再びクロービスとも会えるはずだ。
だが。
「その前に――」
はっきりしておくことがある。楽器の手がかりを探しているのか、キョロキョロと辺
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