暁 〜小説投稿サイト〜
【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
第百三四幕 「バッド・ラック・ビート」
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有名になっちゃってるから知ってても全然おかしくはないけれど、知っててこの場に至るまで名前を確認することすらしなかったのって、おかしくない?)

 メディアに出たときとはこっそり髪型も変え、化粧も変え、ついでに派手なサングラスで逆に普通さを払しょくしようとした私の正体は周囲には意外と気付かれていない。アルキミアの待機形態でもある金時計も相まって、かなりその辺のボンボン東洋人観光客の娘って具合になってる。

 そんな人間にピンポイントでいきなり話しかけてきて、しかも『偶然』ベルくんの昔の友達であることなんて本当に起きるのかな?というか、そもそも――ルマリーさん、今になって思えば『ベル君の話が出る前から』直線ルートでこの倉庫に向かってたよね?

 人間、追いつめられると微妙にズレたことを口にしてしまうものだ。
 その例に漏れない凡人な私は、自分にしか聞こえないような小さな声で言葉を漏らした。

「最初から、私をここに連れてくる気で………?」
『――その可能性大なり。マスター、アルキミアの起動準備完了しました……マスター、二つの覚悟は出来ましたか?出来てなくとも現実は来ますよ』
「二つって、何と何さ?」
『真実を知る覚悟と、理不尽と戦う覚悟でございます』

 レーイチくんが極めて平坦な声で私にしか聞こえない音声を飛ばす。
 つまり、今、この状況は………ゴイスーなデンジャーという奴らしい。

 それは私の人生的にも、ベルくんとの関係的にもだ。


 佐藤稔(さとうみのり)って女の子がツイてる人間かそうでない人間かと問われれば、多分ツイてる。

 但しそれは悪霊だとか、飛びぬけた不運に見舞われるだとか、そういった類の紛れもない『悪運』だった。
 
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