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提督はBarにいる。
五月雨の過去、提督の過去
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「お待たせ。『煮込みハンバーグセット』だ。」

 付け合わせにバゲットとクロワッサンを出してやる。五月雨は美味そうにハンバーグをフォークに突き刺してかぶり付く。口の端に付いたソースを舐めとり、マリネサラダを一口。バゲットをちぎり、ハンバーグソースを付けてパクリ。
口休めにポタージュを飲み、ぷはぁと一息吐き出した。

「懐かしい……とっても美味しいです!」

「そうか……良かったよ。」

 それからも存分に堪能する五月雨。こういう姿を見るとやはり大きくなっても五月雨は五月雨なんだな、と改めて思ったよ。

「あぁ、美味しかった。御馳走様でした。」

「はいはい、お粗末さん。」

 食器を受け取り、洗い始める俺に、

「では、私はお風呂借りて寝ますね。」

「おぅ、ゆっくり休んでくれ。」

 目線を合わせずに挨拶を交わす。扉が開く音を聞きながら皿を洗っていると、

「提督!」

 不意に五月雨に呼ばれて顔を上げた。

「私……貴方が好きでした!けど、今は別の人ともっと幸せになります!提督も…お元気で。」

 深々と頭を下げて、五月雨は去っていった。顔を上げたその目尻が光っていたのは錯覚だっただろうか?暫くの間、水が出しっ放しなのすら忘れて、硬直してしまっていた。

 翌日、彼女は笑顔で鎮守府を後にした。その数日後、夫婦揃ってのツーショット写真が送られてきた。そこにはタキシードを着た男性と、満面の笑みで純白のウェディングドレスに包まれた雨野五月……いや、名字が変わって高谷五月が納まっていた。その写真は今も、俺の机の引き出しに仕舞われている。
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