五月雨の過去、提督の過去
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て当時の駆逐艦の中では最高錬度だった。
アルコールを飛ばした所に水とデミグラスソース缶を加えて煮込む。デミグラスソース缶は固まっているのでそれが溶けたら、味の調整にケチャップと醤油を。
「そして、キス島撤退作戦……。」
「えぇ、私の運命を変えた作戦です。」
旗艦は夕立改二。そのサポートとして二番艦に五月雨を据えて、雪風、時雨、響、叢雲。何度か撤退を繰り返していたが、作戦が成功した時の戦闘で事件は起こった。道中で会敵した戦艦ル級flagshipの砲撃が夕立に飛んだが、それを庇って五月雨が中破。どうにか艦隊を突破してキス島沿岸まで接近。そこで水雷戦隊と交戦した際に中破していた五月雨に魚雷が直撃。作戦自体は成功したが、五月雨は意識不明の重体の状態で帰投した。一命は取り留めたものの、脚に損傷が残り戦闘は不可能と判断され、退役が決定した。その際に振る舞ったのが今作っているメニューだ。
ソースが出来たらハンバーグを入れて、弱火で12分程煮込んで火を通す。
「……五月雨。」
「何でしょうか?」
「聞きたいことがあるんだ。」
ハンバーグを煮込んでいる間、喉につかえていた疑問をぶつける。
「俺を、怨んでいるか?艦娘としての生命を奪った俺を。」
作戦経過を見れば仕方のない事故だと大概の提督は言うだろう。だが俺は納得出来なかった。あそこでああすれば、装備を別の物に変えていれば……。見直す点は幾らでもあった。だが、そこに気付けずに五月雨を傷付けたのは事実だ。確かにキス島以後、怪我による戦線離脱・退役はウチの鎮守府では起きていない。しかしその唯一の例ですら、完璧に準備をしていたと自負していた俺には許せなかった。
「提督は、完璧主義者過ぎるんですよ。」
そう口を開いた五月雨。
「私は怨んでなんていませんよ、あの作戦の指揮は間違っていませんでした。ホラ、『勝負は時の運』って言うじゃないですか?」
そう言って明るく励ます五月雨。
「いや、しかし……。」
言い澱む俺に、真っ直ぐな視線をぶつけてくる五月雨。
「あの怪我は私の油断と未熟が原因だったんです。現に、私以降は怪我で退役した娘は居ないらしいじゃないですか。」
だが、それは結果論だ。五月雨の一件から俺が学んだという見方をする事も出来る。
「それに、元々私はあまり戦いたいとは思っていませんでした。少し古傷のせいで不便な事もありますけど、今私は幸せなんです。だからこそここに来ました。……提督も、私の事を吹っ切って良いんですよ。」
その言葉に思わず目頭が熱くなり、思わず押さえて誤魔化す。ボヤけた視界で確認すると、煮込みハンバーグもそろそろ良い感じだ。仕上げに生クリームを加えたら出来上がりだ
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