五月雨の軌跡
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わり鏡月のアルコール度数は16°。そんなに軽い酒ではない。
「しかし、艦娘を退役してから何年になる?」
達磨のグラスを傾けながら、五月雨に尋ねる那智。
「今年でちょうど12年ですね、その間も来たいと申請はしていたんですが、流石に元艦娘とは言え一般人をそう簡単に入れる訳にはいかなかったみたいです。」
まぁ、そりゃそうだ。鎮守府の内情を探ろうとするスパイやマスコミは多い。鎮守府内のスタッフならともかく、外での生活が在るものには少なからず影響が出るだろう。
「まぁ、当然の措置ですね。……にしても、折角綺麗な青い髪だったのに染めちゃったなんて、少し勿体無いですね。」
そう言いながら獺祭を煽っている赤城。お前少しは加減しろよ、貴重なんだから。
「やっぱり、あの髪色だと目立っちゃいますし……今のお仕事するんだとあんまり派手な格好できないんです。」
少し自嘲気味に笑いながら、グラスを開ける五月雨。
「そう言えば五月雨ちゃんて今は何してるの?」
いつもの通り、そば焼酎をロックでいっている夕張が尋ねた。
「あ、私ですか?今は小学校の先生やってます。今年で3年目ですよ?」
ぶほっ、と思わずむせ返った。あのドジっ娘の五月雨が、しょっちゅうスッ転んで泣いてた五月雨が教師?どうしても想像できん。
「あ!提督今『似合わない』って思いましたね!?失礼しちゃうなぁ。」
そう言って頬を膨らませている五月雨。容姿は大人っぽくなっても、中身はさほど変わってはいないらしい。
「いや、だってよぉ。秘書艦業務やってた時にとんでもないポカをやらかしてた五月雨が先公だなんてよ……ぶふっ!」
「あぁ、また笑ったぁ〜!」
アハハハハハ!と笑いに包まれる店内。十二年というブランクがあったにせよ、こうやってすぐに昔の雰囲気に戻る事が出来る。いいもんだな、昔馴染みってのは。
「じゃあ、どんなポカをやらかしてたかここでばらしてやろうか?」
俺がニヤリと笑うと、
「わーわーわーわー!」
と真っ赤になって止めようとする五月雨。しかし周りは
「いいぞいいぞー!」
「やれやれー!」
と煽ってくる。すまんな五月雨よ、日本は民主主義の国だからな。多数決には勝てん。
「えっとまずはなぁ、資材の管理表の英数字の4と、漢数字の千を見間違えて、資材の確認に半日かかって大淀に怒られたり……」
「俺にお茶を淹れてくれたはいいが、スッ転んで俺のズボンに熱々のお茶をぶちまけ、焦った五月雨がズボン脱がせようと引っ張って来てなぁ。」
と、俺は苦笑い混じりに当時の思い出を語る。五月雨はというと真っ赤になって俯いたまま固まっている。
「そん
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