プロローグ3 絶望に染まる艦娘
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き、誰かがこちらに向かってくる姿が見えた。
「………ッ!」
それは夕立だった。髪は乱れ、顔や腕、足など至る所に青痣が出来ており、死んだ魚のように濁った紅い瞳からは涙が流れていた。
そんな夕立の姿を見た榛名は全てを理解した。夕立は大車提督から暴力を受けていたのだ。それもかなり激しい暴力だ。
夕立はフラフラしながらこちらに向かって歩いてきていたが、途中で躓いて倒れそうになる。
「夕立ちゃん!」
榛名は夕立が倒れる前に抱き留める。榛名に抱き留められた瞬間、夕立が堰を切ったように泣き始めた。
「榛名、さん……!もう…夕立、ここにいるの…やだよぉ………!」
夕立が榛名の服を握り締め、泣きながらそう言ってくる。
夕立もまた榛名と同じように限界を迎えていたのだ。そのことに榛名は胸が張り裂けそうになった。それと同時に、榛名の中に一つの覚悟ができた。
榛名は泣き続ける夕立に言った。
「夕立ちゃん、榛名と一緒にここから逃げましょう」
「で、でも、そんなことしたら榛名さんも比叡さんみたいに………!」
「大丈夫です。夕立ちゃんは絶対に護ってみせます………榛名の命に変えてでも」
榛名は夕立にそう言った。榛名にとって今一番大切なのは夕立だ。夕立さえ無事ならば、それこそ榛名は沈んでも構わなかった。
そんな榛名の強い覚悟が伝わったのか、夕立が不安げな表情を浮かべながらも榛名に言ってきた。
「……夕立も、榛名さんを絶対に沈めさせない……っぽい!」
「夕立ちゃん………!」
夕立は普段は気弱ではあるが、しっかりと芯があるということはずっと面倒を見てきた榛名が一番知っている。夕立がそう言ったということは、夕立も榛名と共にここから逃げ出すことを決意したのだろう。
しかし、今すぐにここから逃げ出すわけにはいかない。まだ大車提督や大車提督の息がかかった憲兵達が起きているからだ。ここから逃げ出すのは提督や憲兵達、他の艦娘達が寝静まる真夜中がいいだろう。
榛名と夕立は真夜中になるまで、榛名の自室でおとなしくすることにした。
自室に戻ると、疲弊している夕立を回復させるために少しの時間だけ寝かせ、榛名はその間海図を広げて何処へ逃げるのか計画を立てていた。
(他の鎮守府に助けを求めるのがいいのでしょうが………)
榛名はそう考えたが、もしその鎮守府の提督があの男の仲間だったら間違いなく榛名と夕立は拘束されて引き渡されてしまうだろう。それを考えると、他の鎮守府に助けを求めるのは得策ではない。
(他にいい場所は………)
榛名がそう思いながら海図を見ていると、ある場所が目に留まった。
それは随分と前に放置された旧泊地だ。距離的にはそう遠く
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