22話 焦土戦術
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その現場には――生肉を美味しく食べる狐娘の姿が――なかった。
「良かった……ちゃんと焼いてから食べてるな」
ゴブリンの村の建材を燃やして、その炎でソーセージを炙って食べているモーニャンがいた。
彼女は僕の姿を見ると、木の棒でくし刺しにしたソーセージさんを掲げ、朗らかな笑顔で――
「ワァン様にあげるー。とっても美味しいよー」
僕は、何の肉で出来ているのか分からないソーセージを受け取った。
ちゃんと火で表面を炙っていて安全そうだ。
一口齧ってみた。中もちゃんと熱が浸透していて、よく焼けている。
味は豚肉に近い感じでアッサリしているが、使われている塩が少量すぎて物足りない。
贅沢を言えば胡椒が欲しい。
「塩が薄くて物足りないな……」
「贅沢言ったらあかん!
ゴブリンが塩を入手するの大変なんやで!
山の幸を大事にせんとバチが当たるでホンマ!」
ナズニャンが背後から追いついてきて、再びツッコミを入れてくる。
……塩は贅沢品か……懐かしいなぁ……。
僕が今まで生きてきた世界は、あの中国ですら塩の専売をやめて、安い塩が幾らでも入手できたからギャップがある。
獣人だって、人間と同じで塩がないと死ぬ。
それは何故か?
必要な栄養素の半分近くが、塩を含むミネラルだ。
一種類足りなくても、着実に肉体が死へと向かうのに、塩を全く摂取しない生活を送れば、偏った食生活をしたのと同じ事が起こり、ナトリウム不足を補うために骨は溶けるわ、精神は不安定になるわ、体調を崩しまくって人間は死んでしまうのだ。
『一行で説明できる内容だお……』
『塩は必要な栄養素だから、足りないと死ぬでいいような気がしますぞ』
「塩か……全部終わったら入手方法を考えるか……」
新しい問題に直面したような気もしたが、こうして僕達はゴブリンの集落を30ほど焼いた。
これでゴブリン略奪共同体は、僕達の村に真っ直ぐ来れない。
徒歩で5日以内に移動できる範囲に、利用できる村は存在しなくなったのだ。
共食いするなら兎も角として、40万匹が通過しようとすれば、ほとんどのゴブリンが餓死を経験する事になるだろう。
山の幸を利用すれば、もっと先へ進めるかもしれないが、狩りと採集に時間がかかって手間取るはずだ。
その稼いだ時間を利用すれば、幾らでも嫌がらせは出来――
『ゴブリンどもは暗黒神を崇めていて、非常時の共食いはOKですぞ!』
『弱ったゴブリンを殺して、無理やり長距離進軍するという凄い戦術を使いますお』
『人間より小柄だから、結構、低燃費で効率の良い生き物だったりするのだが……?』
最初に言えよ!?それ!
やばい!無駄に大量にいる戦略輸送部隊にやらせているゴブン街道の交通インフラ破壊じゃ間に合わないかもし
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