虚像-フェイク-part2/偽りの巨人
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にも絶望が心を染め上げようとしていた。
「ははははは。さすがにこればかりは予想外だったようだな。虚無の娘」
クロムウェルはより深い絶望を覚えるテファをあざ笑ってきた。
「あんた、シュウにいったいどんな小細工をした!?」
マチルダもシュウがこんな蛮行に及ぶとは思えず、いったいどういうことか説明を求めてきた。
「見ての通りだ。彼も余の理想に共感し、友達となったのだ」
クロムウェルはまるで詫びれもしないでそう答えた。
「ふざけんな!あいつがこんな馬鹿な真似をするはずがないだろう!!」
彼は人を守ることに必死過ぎるほどの使命感と責任感があった。少なくとも、人の命を蹂躙することをよしとするような奴ではなかった。マチルダはクロムウェルの言葉を一蹴した。
「シュウ、ヤマワラワ……お願い、止めて!」
両手を広げて叫ぶテファだが、ネクサスは耳障りといわんばかりに、さらにもう一発、今度はマチルダたちに向けて光弾を撃ち込んだ。
「ウワアアア!!」
巨人の攻撃はすべてが人間にとって強大すぎた。ネクサスの〈パーティクルフェザー〉は直撃はしなかったもの、足下で爆発した。
「……!」
テファは彼からの予想外の非情な裏切りに、より深い絶望を抱いた。
「ふん、バカな娘だ。どこまでも現実を見すえないとは。
余や彼らのような優れた生命体が、下等生物共にあわせいわんばかりにる義理などない。むしろ、この程度のことも見破れなかった自分の浅はかさを呪うがいい」
今のクロムウェルは、この場の誰よりも上の立場にいる。わざわざ立場の弱いテファの頼みを聞く必要もない。寧ろいずれ、テファを取り戻すために邪魔をしに来るかもしれない者たちを生かす気はなかった。
「次は確実に当ててくるぞ。ほらほら早く逃げたらどうだ空賊ども?逃げるのは得意だろう?」
ヘンリーはクロムウェルを見て、わかり始めていたとはいえ、主君の醜悪な一面を見て嫌悪感を懐いた。
「閣下…それが、あなたの本性なのか」
それを見てクロムウェルは悪意を孕んだ余裕の笑みを浮かべた。
「もはや共犯だと言うのに、そんな不快な目を向けてよいのか、ヘンリー君?余に逆らえば君はアルビオンに帰れなくなるのだぞ?それに…」
「きゃ…!」
クロムウェルは新たな人質のつもりか、テファを逃がすまいと、ガシッと捕まえた。
「テファ!」
思わず体が動きそうになったがマチルダは足を止める。
「これたまたまチェックメイトだな、空賊共。自由にこだわる貴様らにとって、この娘のことも無視はできんだろう?」
「…自由を汚す下衆が」
ガル船長はクロムウェルの脳天に、今すぐに鉛弾を撃ち込みたい衝動に駆られる。
いや、まだ自分たちには手札がある。まだギルとグル、そしてまだ船に残っているクルーたちがいる。彼らもこの騒動を聞き付けないはずがない。に
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