61.第十地獄・灰燼帰界 後編
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るから大人しく寝ていろ」
短い会話の後に、オッタルはオーネストを通り過ぎて更に加速した。
階層一つ分の自由落下でも正確に落下先を見極める奇跡的な体捌きと、恐らくそのまま着地しても怪我の一つもしないであろう頑強な肉体。そしてこの街でたった二人しか存在しない『公式なレベル7』の一角にして、勝てる戦士がいないが故に最強の代名詞となった冒険者。
そんな男が、しかも事の仔細をある程度のぞき見していたミリオン・ビリオンのサポートまで受けて、相手の弱点まで判明している段階で、攻撃を失敗するなどという事は――それこそ彼の仕える女神フレイヤの名に誓ってあり得ない。
「黒き獣よ。貴様はつくづく星の巡りが悪いな……この世界で最悪の人間二人に追い詰められた挙句、フレイヤ様の命を受けた俺が来るまでにその『切り札』とやらを発動させ損ねた。だからといって、どうという訳でもないが――」
アズの攻撃ともオーネストの破壊とも違う、場を支配するかのような圧倒的な存在感と力を込めた刃を以て。
「――貴様は、ここで潰えろ」
『ガアアアアアアアアッッ!?!?』
空間ごと断絶するが如き一閃が、回避の間に合わない速度で魔力集束の要となっていた黒竜の右目を顔面ごと切り裂いた。渦巻く魔力が力を喪って霧散し、暴風となって60層を吹き抜け、そして黒竜が最後の最後まで殺意塗れでこしらえた『切り札』は日の目を見る事すらなく消え去った。
奇しくもそれは、嘗て黒竜がその眼球を喪うこととなった一撃と、まったく同質の一撃だった。
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