61.第十地獄・灰燼帰界 後編
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黒竜はオーネストの説明不能な戦闘能力と再生能力には神の力が関係していると踏んでいた。普通の冒険者ではありえないほど高度で深くに『神の力』が入り込んでいるのならば、己の血によってその力の一部を封じることも可能だと考えた。
ただ一つ誤算であったのは、神の力を封じられたオーネストは灼熱の血に抗うことが出来ずその場で燃え尽きるという見立てが違った事だ。オーネストは確かに弱体化したが、その全身を蝕み続けるだけで殺すには至っていない。
人間が浴びれば数秒と持たずに塵となって崩れるほどの熱量に耐えているオーネストの力には、まだ黒竜の予測できない何かがあるのかもしれない。しかしどちらにせよもう終いだ。弱体化には成功した。あとは振り返り、止めを刺すだけだ。
魔石を一つ犠牲にはしたが、翼の再生を止めることで貫かれた部分の再生は続いている。もうあの忌々しい消失の弾丸も
――『切り札』の準備を止めないまま、黒竜は静かに己の勝ちを確信していた。
「――まったく、最悪なダチだよ。お前は」
前触れと呼ばれる程のものもない、無機質なまでの致命。
黒竜の胴体を――それも、魔石がある場所をピンポイントで、青白く発光する刃が貫いた事に黒竜の思考は一瞬停止した。遅れて、空間を捻じ切るような轟音と閃光が空間を強かに照らしあげた。
『―――――ッッ!?!?』
黒竜が見上げた先にいたのは――金属片を撒き散らし、両腕と胴体から血を噴出しながら「ざまぁ見ろ、くそったれ」と笑うオーネストの顔だった。
= =
折れた右腕に、呪帯の絡まった『選定之鎖』が巻き付く。
それは、まだ辛うじて意識のあるアズが下に放り投げた、アズの最期の力の結晶だった。オーネストの背中に優しくもたれ掛かったそれは、オーネストにその力を貸す。恐らく、そういう鎖なのだろう。
余程慌ててこちらに放り投げたのか、鎖にはついでとばかりにアズの持ち込んだ水筒だのトランプだのアイマスクだのといったしょうもないガラクタが幾つか絡んでいる。この極限状態に於いてここまで役に立たないものを見せてくる馬鹿も珍しいが、それもアズらしいといえばらしいのだろう。
首の皮よりなお薄く、しかし確かにそれは途絶えかけの戦意を繋げて見せた。
だが、どうする。魔法はまだ使えない訳ではないらしいが、力が先程のもの程引き出せないし、握力が足りないから剣を振り下ろせない。鎖の補助があってもそれは無理だろう。何かサポートする道具でもない限り、もう打つ手が――。
(――あんの馬鹿、そういう事かよ!)
よくもまぁ、と更に飽きれながら鎖に絡まったものの一つ、トランプの束を掴み取る。
黒竜の血の炎で皮膚の爛れと再生力
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