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Blue Rose
第三十五話 欧州の美その六

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「誰が見てもそう思うわね」
「そうだよな」
「けれどね」
「俺達はそうした関係じゃないからな」
「友達よ」
 この関係だというのだ。
「彼氏と彼女じゃなくて」
「ああ、これは俺達にしかわからないか」
「そうね」
「周りがどう見てどう思っていても」 
 それでもというのだ。
「実は違うってな」
「実際にあることだけれど」
「俺達もうそうなった」
「そうね、私達は友達よ」
「そのことは変わらないな」
「私まだ恋愛の経験はないわ」
 男であった時からだ、優花にその経験はない。それでその身で以て恋愛といったものは知らないのだ。知識としてあるだけだ。
「けれど龍馬にはね」
「俺もだよ、御前にはな」
「そうした感情はないわね」
「全然湧かないな」
 今こうして共にいてもというのだ。
「今も」
「そうね、私もね」
「友情を感じていても」
 それでもというのだ。
「恋愛はないな、お互いに」
「そうね、ずっと友達だったし」
「その感情が変わることはないな」
「性別が違っても友情ってあるのね」
 優花はここでこのこともわかった。
「私達みたいに」
「そうだな、俺も思ったよ」
「私達の場合は特殊だけれどね」
 そうしたケースだ、優花が性別が変わったからだ。
「それでも」
「性別が違ってもな」
「友情はあって」
「俺達もな」
「友達ね」
「そうだな」
 二人でこう話をした、美術館の名画達の中で。そして昼食のレストランに入ってそこで食べた。だがここで優花は二人用のテーブルで自分の向かい側の席に座る龍馬にこんなことを言った。
「龍馬ワイン一本頼んだけれど」
「飲むさ」
「本当に?」
「ああ、一本全部な」
「その一本全部開けたら」
 それこそというのだ。
「今日三本になるわ」
「朝はシャンパンでな」
「あらためて言うけれど」
「相当に飲んでるな」
「飲み過ぎじゃない?今は足取りも言葉も確かだけれど」
「これが三本になったらな」
「午後大丈夫なの?」
 かなり真剣にだ、優花は龍馬に問うた。そして自分のことも言った。
「私も二本で不安だし」
「まあそこはな」
「飲んでもなの」
「何とかやっていくさ」
「何とかって」
「これまで結構歩いて酒も抜けてるしな」
 その二本の分もというのだ。
「大丈夫さ」
「だといいけれど」
「それで午後は陶器のコーナー行くんだよな」
「そう、そこがまたね」
 その陶器のコーナーについてだ、優花は龍馬に目を輝かせて話した。
「素晴らしいから」
「行って損はないか」
「ないわ」
 太鼓判を押した言葉だった。
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