第三十五話 欧州の美その四
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「ちょっと描けないな」
「独特のセンスよね」
「相当にな」
「こうした絵を描ける人だったの」
「もうお亡くなりになってるか」
「そうなの、けれど絵は残ってるから」
人は死して名を残すというがだ。
「こうしてね」
「観られるんだな」
「そうなの」
「優花ってこうした絵も好きだな」
「マグリットも好きでね」
ルネ=マグリットだ、ベルギーの超現実主義の画家だ。
「それにルネサンスの頃の絵も」
「ダ=ヴィンチとかミケランジェロとかか」
「それとボッティチェリね。ただ」
「ただ?」
「ボッティチェリの絵はかなり失われてるのよ」
このことはだ、優花は極めて残念な顔で話した。目ではシャガールの絵を見て満足しているが頭の中ではルネサンスの頃を見ていた。
「残念なことに」
「何だ?戦争とか震災で燃えたか?」
「いえ、自分で燃やしたりしたの」
「描いた本人がか」
「そうしたの」
「失敗作を燃やしたのか?」
「違うわ、立派な作品をね」
描いたそれをというのだ。
「自分で燃やしたの」
「作品が気に入らなかったのか」
「その頃フィレンツェにサヴォナローラってお坊さんが出て」
「ああ、世界史の教科書で出てたな」
「その人が 美術品や工芸品を贅沢だって言ってね」
そしてというのだ。
「そうだって思ったボッティチェリさんが自分からね」
「絵を焼いたのか」
「自分自身でね」
「残念な話だな」
「ほら、キリスト教って贅沢を戒めてるでしょ」
「修道院とかな」
尚この辺りはいい加減なものがある、バチカンの腐敗による贅沢は人類の歴史において特筆すべき域に達していた。
「そうだよな」
「多くの宗教が贅沢を戒めてるけれど」
「キリスト教もそうでか」
「そう、その人はそうした人で」
「芸術は贅沢か」
「それで燃やさせたの」
「考え様によっては悪いことしたな」
龍馬は優花の話を聞いてこう言った。
「芸術品を燃やさせたとかな」
「そうよね、最後は法皇様批判してね」
「殺されたのか」
「処刑されたの」
「あの頃の法皇って凄かったよな」
このことも教科書に書かれていることだ。
「贅沢三昧で陰謀も何でもやって」
「異端審問もあってね」
「やりたい放題だったよな」
「日本じゃよく比叡山が言われてるけれど」
「比叡山なんてものじゃないな」
その腐敗のレベルがだ。
「あんなものじゃな」
「徹底的に腐敗していて」
「その法皇に喧嘩売ってから」
「批判してね」
そしてその結果だったのだ。
「色々あってね」
「処刑されたんだな」
「そうなったの」
「とんでもなく悪いことしたとも思うけれどな」
芸術品を焼かせたことについてだ、龍馬はこうも思った。だがそれでも彼は当時の
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