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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十六話 安らぎ
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させたいのは同盟だけではないらしい、帝国も同じ思いのようだ。内乱での戦力消耗が意外に大きかったのかもしれない。その所為かもしれないが此処最近の哨戒活動は至って平穏だ。
カタッと音がした。音がしたほうに眼をやると先程まで寛いでコーヒーを飲んでいたオペレータが真剣な表情で計器を見ている。音はコーヒーカップを操作卓に置く音か……。どうやら何かが起きたようだ。
「艦長、前方に未確認艦船を発見! 規模、約三百隻です!」
未確認艦船か……、おそらくは敵だろうが三百? 哨戒部隊か?
「現在この宙域に味方の艦船はいるか?」
「いえ、一隻もいません」
オペレータが俺の問いに答えた。その答えに艦内が緊張する。
「では敵だな、単純な引き算だ。全員、第一級臨戦態勢をとれ!」
「戦うのですか?」
「それは無い、本艦は後退する、急げ!」
フェザーンの件がある、オペレータは心配しているのだろうが臨戦態勢は念のためだ。
「艦長、敵艦から通信です」
「通信?」
通信士官が小首をかしげながらプレートを俺に渡した。
“吾に交戦の意志なし。願わくば話し合いに応ぜられん事を”
話し合いか……。亡命者か? しかし三百隻だ、亡命にしては多すぎる。
「妙ですな、亡命者にしては多すぎるような気がしますが」
俺と同じ疑問をエダ副長は感じたらしい。腕を組んで考え込んでいる。
「まあ、詮索は後だ。臨戦態勢は解くな、あちらさんに機関を停止し、通信スクリーンを開くように伝えろ」
向こうのほうが戦力は大きい、本当に話し合いを望むのなら機関停止に応じるだろう、そうでなければさっさと逃げるだけだ。
宇宙暦 797年 10月 5日 イゼルローン要塞 ジャン・ロベール・ラップ
会議室には幹部たちが集合している。帝国軍がこの要塞を保持していたときは要塞司令部と艦隊司令部がいつも角突き合わせて喧嘩別れに終わったという会議室だ。ムライ参謀長はヤンがこの会議室を使うのは皆に協力させる事の重要さを認識させるためだろうと言っているが俺はそうは思わない。ただ面倒なだけだろう。
「もう知っているだろうと思うが、哨戒活動中の戦艦ユリシーズが帝国軍の艦隊と接触した。向こうのフェルナー准将という人物が私との会談を求めている」
ヤンの言葉に皆が顔を見合わせた。
「提督との会談ですか、一体何の話か、ニルソン中佐は訊いていないのですか」
「確認したが、フェルナー准将は極秘だと言って答えなかったそうだ」
ムライ参謀長とヤンが話している。参謀長は不満そうな表情だ。当然だろう、用件も分らずに会わせる事は危険だ。
「そのフェルナー准将という人物は何者です?」
「詳しい事は分からない、しかし彼を此処へ寄越したのはヴァレンシュタイン司令長官らしい」
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