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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第七話 叙任
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「卯之介、分かっているだろうが、先程まで話した内容は他言無用であるぞ。他言すれば死ぬことになると心得よ。よいな」

 秀吉は威圧的に俺に念を押した。話せる内容じゃない。でも、この謀には他にも関係者がいそうな気がする。時期的に上杉も関係しているかもしれない。これが戦国大名というものなのかもしれないな。

「心得ております。誓って誰にも漏らしません」

 俺は表情を引き締め秀吉に答えた。その様子を見て秀吉は俺に対して頷いた。

「藤四朗、難しい話はこれで終わりだ。お前の与力が決まった。紀之介、連れてこい」

 秀吉が俺につけた与力は三人だった。彼らは俺に順に挨拶した。
 彼ら三人は、郡宗保(知行三千石)、石川頼明(知行千石)、野々村吉保(知行五百石)、順に名乗った。
 俺は三人に名乗りを受けても誰か分からなかった。郡宗保(こおりむねやす)と石川頼明の歳は四十半ば、野々村吉保は二十代後半に見えた。郡宗保は馬廻衆で騎馬隊の運用は慣れているそうだ。そして、野々村吉保は若いが腕が立つらしい。石川頼明は小姓と聞いた。石川頼明は小姓の割に知行千石とおかしな点がある。
 折角、秀吉に与力をつけてもらったが微妙な面子だな。
 これなら俺が家臣した面子の方が余程役に立ちそうな気がすると心中で独白した。

「卯之介、そう言えば面白い奴らを家臣にしたそうだな」

 俺は素っ頓狂な顔で秀吉のことを見た。

「面白い家臣ですか?」
「そうだ。藤林長門守。それと岩室坊の者達のことだ」

 俺は表情を強張らせた。藤林長門守、彼は藤林正保という。彼は伊賀上忍三家が一つ藤林家当主だ。秀吉の指摘した「岩室坊の者達」とは根来衆の生き残り岩室坊勢祐とその一党のことだ。秀吉が藤林正保と岩室坊勢祐を俺が家臣にしたことを知っているのか分からなかった。彼らが俺に仕官した切欠は興福寺宝蔵院の院主、胤舜(いんしゅん)の紹介だ。仕官までに色々とあったが何とか家臣にできた。
 秀吉と根来衆の因縁は知っている。根来衆は秀吉に逆らい滅ぼされた。それでも岩室坊勢祐達は俺に仕官してくれた。だから、岩室坊勢祐と俺に仕えてくれた岩室坊の者達を手放すつもりはない。
 俺は「唯才是挙」と胤舜に明言した。この言葉を曲げては人を紹介してくれた胤舜の顔を潰すことになってしまう。秀吉のことは恐ろしいがここで引くことはできない。ここで引くと胤舜からもう人を紹介してもらえなくなるだろう。それに秀吉が難色を示すとは限らない。

「殿下、両名ともに私に快く仕官してくれました」
「藤林はよかろう。だが」

 秀吉は言葉を切り俺を睨み付けた。俺を射殺すような目つきだ。

「儂に逆らった根来の者達を雇うとは何事だ! それも岩室坊と言えば、最後まで儂に逆らった奴らではないか!」

 秀
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