第一章 天下統一編
第七話 叙任
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。百姓を一人残らず移住させたり、名胡桃城に兵を入れ領地を北条側に渡さないようにした。
俺は石田三成の話を聞いて引いてしまった。北条に名胡桃城を与えておきながら、後になって北条が名胡桃城を強奪したと因縁をつけたことが真相のようだ。北条は秀吉に嵌められたのだ。俺が感じた違和感はこれだったのか。
「卯之介、何故に儂が北条を潰したいか分かるか?」
「徳川と婚姻関係を築き同盟関係にある北条の存在は容認出来ないです。北条と徳川が組めば豊臣家の脅威となります。そして、北条を潰し徳川の力を削ぎ、その徳川に北条の領地を治めさせるつもりでしょうか」
秀吉は満足そうに口元に笑みを浮かべた。石田三成と大谷吉継は驚いた顔で俺のことを見ていた。
「卯之介、何故そう思う」
「小牧・長久手の戦いで殿下を野戦で破った徳川家康は天下にその武名を轟かせたはずです。だからこそ殿下は徳川家康に妹と母を渡してまで臣下に付けざる終えない状況に追い込まれてしまいました。徳川家康は豊臣政権にとって脅威になります。だから、豊臣家の本拠である畿内から遠ざけないといけません。ですが百三十万石の大封を領する徳川を転封させるほどの広い領地はありません。ないなら作るしかありません」
俺は歴史を知っている。だから、秀吉と石田三成の話を聞いて、秀吉の考えが見えてきた。だが、俺は内心で秀吉の卑劣なやり方に晩年の家康が豊臣に対して行った行為に相通じるものを感じた。天下人とは汚い手も辞さない者でなければ立つことができない高みなのかと思った。俺は心にその言葉をしまい感情を表に出さず冷静な表情で秀吉を見た。
「卯之介、北条攻めが終われば、お前に伊豆一国をやろう。手柄次第では更に加増してやる」
秀吉は俺に北条滅亡後の話をはじめた。彼は北条を滅ぼせると確信しているのだろう。確かに北条が頼みとする徳川家康と伊達政宗が北条を裏切る以上、北条に勝ち目はない。北条が何をしようと、秀吉は北条を滅ぼす方針を変更する気がない。だが、徳川家康に北条の領地を与えることは危険すぎる。徳川家康は関東を治めきるからだ。俺が伊豆国を領することになれば、徳川の領地と接することになる。立ち回りを一つでも間違えると徳川家康にすり潰されることになる。
「殿下、ありがとうございます!」
俺は不安を打ち消すように大きな声で秀吉に礼を述べた。秀吉は俺をどう扱うつもりなのかが気になった。もし、徳川家康と対立する立場に据えられると俺は破滅する。今でも俺は吏僚派の立ち位置にいる感じがする。この時期に豊臣系大名が武断派と吏僚派と明確に分かれている訳じゃない。だが石田三成と大谷吉継に近い俺はこのまま時間が推移すると間違いなく吏僚派だろう。
やばすぎる。胃が痛くなってきた。俺は秀吉の面前であるから胃の痛みを我慢した。
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