第一章 天下統一編
第七話 叙任
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辞退を申し出た。位階が重要だからこれだけ貰っておけば問題ない。この時期に相模守は絶対にまずい。戦場に的になりに行くようなものだ。
「相模守が不服か? では左京大夫にするか?」
「不服など滅相もございません。この時勢に相模守は荷が重いと思っただけです」
俺は勢いよく平伏し秀吉に弁明した。左京大夫に叙任する話は冗談だろう。左京大夫は従四位下相当の官職。俺がもらった従五位下の四階級上の官位だ。仮に俺が左京大夫になれば石田三成を官位の上では超えることになる。
部下が上司より官位が上なんてありえないだろう。だから、これは冗談に違いない。秀吉は俺に相模守に叙任することで北条側を刺激するつもりなのかもしれない。初陣を迎える豊臣縁者の若武者に相模守を叙任する。だが、俺が簡単に殺されるようなら逆効果になる。それが分からない秀吉じゃないはずだ。
秀吉の凄さはその政治力と外交力だ。徳川家康すら秀吉の政治力には屈服せざるを得なかった。だが、その秀吉にすら抹殺できなかった徳川家康は恐ろしい存在といえる。話が逸れたが秀吉はある程度俺にお膳立てしてくれるだろう。だが、俺の知行だと俺につけれる与力はどうしても小粒になってしまうだろうな。
「卯之介は北条を恐れるか」
「殿下、百年に渡り関八州に覇を唱えた北条を一目置かない者などいましょうか?」
俺は敢えて言葉に出さず言葉を濁した。俺の言葉尻に秀吉は口角を上げ狡猾な笑みを浮かべた。
「それならばこそ。北条を潰せば豊臣の威勢は天下に轟くであろう。お前は黙って儂の言う通りにしていればいい」
秀吉の表情と口振りに違和感を感じた。秀吉は北条家を滅ぼしたく堪らない様子に見えた。それも秀吉自身の命令に逆らったから北条を潰すではなく、北条を潰すことが目的のように見えてきた。北条家は当初は秀吉に恭順姿勢を示していた。だからこそ真田と係争中の沼田郡の問題を秀吉の手に委ねたはずだ。だが、秀吉の様子を見ると名胡桃城を北条側が奪ったというのには裏がある気がしてきた。
「卯之介、何を考えている」
秀吉は鋭い目で俺のことを見ていた。
「いいえ。何も考えておりません。相模守の重責に心震えておりました」
秀吉は俺の返答を聞くと鼻で笑った。
「佐吉、卯之介に北条攻めに至った仔細を話してやれ。包み隠さずにな」
秀吉の言葉に一瞬石田三成は驚くも直ぐに平静を装った。
「殿下、よろしいのですか?」
「構わん。お前達も卯之介のことを評価している」
石田三成は秀吉に対して「かしこまりました」と頭を下げると、石田三成は語り出した。秀吉は真田と北条の沼田領の帰属問題に裁定を下さした。この時、秀吉は北条に沼田城と名胡桃城を譲渡したのだ。そして、真田は引き渡した沼田領で卑劣な工作を行った
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