第一章 天下統一編
第七話 叙任
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い。仕事と軍役の準備に追われてついつい忘れていた。
しばらくすると大谷吉継が小姓達を連れだって具足を運び込んできた。小姓達は運び終えるとそそくさと部屋を退出していった。具足は古風な当世具足で黄糸と黒漆塗で塗装した鉄で製作されているようだった。兜は星形兜に三鍬形の兜飾りがついている。鎧の大袖・籠手・手甲には金塗の、木下家の紋、沢瀉紋が付いている。
俺は小出家の養子だから園部額紋じゃないのか。ふんだんに沢瀉紋が使用されているんだが、でも秀吉からの下賜品だから気兼ねすることはないな。屋敷に帰ったら秀清にでも聞くことにしよう。
「卯之介、それはお前の具足だ。北条攻めでこれを身につけよ。紀之介、卯之介に陣羽織を着せてやれ」
秀吉に言われた大谷吉継は真新しい陣羽織を持って俺に近づくと、その陣羽織の背を俺に見せた。それは朱の生地に白糸で五七桐が刺繍されていた。
俺は目を向いてしばし凝視してしまった。五七桐は豊臣家が後陽成天皇から下賜された紋である。俺の陣羽織にこの紋を使用させる意図が理解できない。分かることは俺がこの陣羽織を身につけて戦場に出れば、秀吉縁者であると示すことになる。
「卯之介、儂はお前に期待しておる」
秀吉は神妙な顔で俺に言った。俺は大谷吉継に促され陣羽織に袖を通した。俺は陣羽織の着心地を吟味することなく、秀吉に対して平伏した。
「殿下、過分の計らい御礼申し上げます」
俺が体を起こすと秀吉は陣羽織を身につけた俺のことを凝視した。
「少し大きいかもしれんな。卯之介、その陣羽織と具足はお前の身体に合うように後で調整するがよい。紀之介、後のことは頼むぞ」
秀吉は大谷吉継に声をかけた。大谷吉継は秀吉足して頭を下げる。それを一瞥した秀吉は俺に視線を戻した。
「卯之介、もう一つお前に与える物がある。佐吉」
秀吉は石田三成に視線をやり目配せした。すると石田三成は秀吉に頭を下げた後、立ち上がり俺と少し距離を置いて座った。俺は石田三成に対して平伏した。
「関白太政大臣豊臣朝臣秀吉の名において命じる。小出藤四朗俊定。右の者に豊臣姓を下賜し、従五位下相模守に叙任するものとする。謹んで受けよ」
俺は官職を聞き頭が困惑してしまった。
秀吉は何を言っているんだ。相模守は「相州太守」を自称する北条家に喧嘩を売っているよな。これから戦争する相手だから気にすることはないと言えばそれまでだが。戦場で俺の官途が北条側に漏れて命を狙われないかと心配になってきた。
「殿下、御礼申し上げます」
俺は平伏し顔を上げると秀吉は俺に大仰に頷いた。
「殿下、官位をいただき感謝の極みでございます。ですが、『相模守』の官職は私には少々荷が重いかと」
俺はやんわりと秀吉に官職の
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