658部分:第九十四話 最強の聖闘士その五
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第九十四話 最強の聖闘士その五
それが一つ、また一つと童虎にぶつかる。するとそれはすぐに童虎自身になった。それが一斉に彼を取り囲んできたのである。
「わし自身か」
「そうだ」
まさにそうだと。キュドイモスの声だけがした。
「貴様は貴様自身に倒されるのだ」
「わし自身にか」
「貴様は貴様を攻撃できるのか」
こう問うのである。童虎にだ。
「どうなのだ。それは」
「造作もないこと」
「何っ!?」
「確かにわしも己は大事だ」
それは認めたのだ。
「しかしだ」
「しかし?」
「わしは必要とあらばわしと闘うこともできる」
そうしてであった。再び構えを取る。そうして。
「ではだ。来るがいい」
「それは貴様自身への言葉だな」
「如何にも」
それはその通りだというのである。
「わしは闘う」
「では見せてもらおう」
キュドイモスはその言葉を受けた。だが姿を見せないのだった。
あくまで声だけだ。今は決して姿を見せなかった。声だけだった。
その声でだ。彼に告げていたのである。
「貴様のその闘う気構えをだ」
「では。今からだ」
そうして再び構えてだった。あの技を繰り出すのだった。
「廬山昇龍覇!」
その技で周りの自分自身を消し飛ばしたのである。その周りにいる彼等はそれで消えたのだった。完全に姿を消してしまったのだ。
そして世界も元に戻った。かつての彼等が闘うその世界にだ。戻ったのである。
「世界も元に戻ったか」
「そうか。それで破ったのか」
「世界まで元に戻すことができるとは思っておらんかった」
これは童虎にとっても予想外のことだったのである。
「それはじゃ」
「だが。それもまた流石だと言っておこう」
「ふむ。そうか」
「貴様のことはわかった」
こう言うとだった。童虎の前にいる彼はだ。右手を高々と掲げた。するとであった。
五老峰に戻ってきた。まさに一瞬であった。
「時代が戻ったか」
「貴様にできることは私にもできる」
「神だからじゃな」
「その通りだ。さて」
「ではここでも闘うのか」
「いや」
しかしであった。ここでキュドイモスは言うのだった。
「今回はこれで止めておこう」
「よいのか」
「充分楽しませてもらった」
余裕と共の言葉だった。
「だからいい」
「左様か」
「ライブラ、今の貴様はかつての貴様とはまた違う」
その楽しんでいることが浮かんでいる笑みだった。
「その様だな」
「ふむ。確かにあの時のわしは今とは違うな」
「それがわかったことも収穫だ。それではだ」
「またか」
「また会おう」
はっきりとした別れの言葉であった。
「そしてその時にはだ」
「決着をつけるというのか」
「私はアーレス様の為に闘う者」
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