暁 〜小説投稿サイト〜
提督はBarにいる。
ちょっとだけ、提督の昔話A
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


「いいっスよ?大した物じゃねぇし。」

 許可が下りたので近寄って観察する。お湯に顆粒の鰹だしを入れて溶かしている。結構濃い目の出汁を使うようだ。

「ホントは花鰹で出汁取った方が美味いんだけどね、今日は手抜き。」

 苦笑いしながら男がそう言った。出来た鰹だしをボウルに移し、冷蔵庫に入れて冷やす。冷製の料理を作るのか。確かに今日は汗ばむような陽気だから丁度よいかもしれんな。

 そう思っていたら今度は電子レンジで温めていたアジの開きを取り出して、骨を除きながら解している。

「俺の朝飯のおかずだったんスけどね、客が来て食いそびれちゃって。」 

 料理の腕も去ることながら、整体師としての腕前も中々だ。私も定期的に施術を受けているが、持病だった腰痛は大分マシになっている。アジをほぐし終わったら、今度は胡瓜と茄子を取り出した。胡瓜は縞模様になるように皮を剥き、薄くスライス。茄子も同じように半月にスライスして、両方を塩を軽くまぶして混ぜて置いておくようだ。

 今度は茗荷と青じそが出てきた。茗荷はみじん切り、青じそは千切りにされていく。

「もしかして蕎麦か素麺か?」

「残念ながら違うんだなぁ〜。ま、見ててくださいよ。」

 男はニヤリと笑うと薬味を器に盛り、今度はミキサーを取り出した。

 ミキサーの中にほぐしたアジ、炒りごま、味噌、冷やしていた鰹だしをお玉で1杯入れるとミキサーにかけて細かくしていく。

 ペースト状になった所で別のボウルに移し、鰹だしを少しずつ加えて伸ばしていく。

「本場だと擂り鉢でやるらしいんスけどね。めんどくさいんで。」

 つまりこれはどこかの郷土料理、という事か。本当にこの男の料理のレパートリーは幅が広い。

 先程塩揉みしておいた胡瓜と茄子から水が出ている。男はこれを搾って味噌だれに加えて混ぜ、味見。

「う〜ん、塩気が薄いかな?」

 そう言いながら塩を入れて調整している。冷蔵庫に入れて冷やしてから食べるらしいのだが、今日は時間が無いので更に氷を加えてタレ自体を冷やしていく。

「『教官』さん、炊飯器から飯盛ってもらっていいすか?そこにある丼に。」

「あぁ、わかった。」

 炊飯器を開けると中身は麦飯。普段から麦飯を食べているのだろうか?

「白飯ばかりじゃ飽きるんでね、たまには雑穀米やら麦飯やら炊くんですよ。」

 成る程な。私は丼に麦飯をよそい、施術室の方へ持っていく。

「はいお待ちどぉ、『冷や汁』だよ。飯にタレをかけて薬味載っけて、かき混ぜて食べるんだ。」

 薬味は先程刻んでいた茗荷と青じそ、それにおろししょうがと白炒りごまだ。好きなだけ乗せてかき混ぜてズルズルとかっこむように食べる。

 麦飯と焼いたアジ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ