ちょっとだけ、提督の昔話A
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「う〜ん、darlingと元帥閣下の出会いはわかりまシタ。けど、何でdarlingはテートクになったんデス?」
金剛の話は尤もだ。実の所俺は整体師の仕事を気に入ってはいたし、生涯この仕事で喰っていく腹積もりだった。
「だぁから言ったろ?このジィさんに騙されたて拉致られたの。」
「人聞きの悪いことを言うでないわっ!アレはお前も納得の上での勝負じゃったろうが!」
ぎゃあぎゃあと怒鳴り合う俺とジィさん。その隣で可笑しそうに笑う三笠教官。ちょうどその現場に居合わせた、言わば立会人だ。
「ンー?三笠お姉さまは知ってるデスか?」
「あぁ、知っているとも。私はその勝負、一部始終を見ていたからね。」
そう言って三笠教官が金剛に語り出していた。
あれは……そう、二人が出会って一月と経っていない頃だ。
ー昼休み・施術室ー
「ハイどーぞ。」
元帥のノックに気のない返事。ぶっきらぼうな男だと受け止めてしまうかも知れんが、一度付き合い始めると誰にでも分け隔てなく接しているだけだと解ってくる。ましてやここでは向こうが『先生』であり、こちらは『患者』。客商売としては間違っているかも知れんが、この室内では彼の方が上手(うわて)だ。
「よぅ、忙しく……は無いようじゃな。」
「ま〜た来たのかジィさん。よっぽど暇なんだな。」
「私も邪魔するぞ。」
「あらま、『教官』さんまでお揃いで。随分暇人だらけなんだなぁ海軍の本拠地っつっても。」
「馬鹿な事を言うでないわ。今の今まで仕事じゃったわ。それでな?まだ昼飯を食っておらん。何か作ってくれんか?」
「あ〜!?食堂あるだろうがよ!そっちで食えよ!」
「別にエエじゃろ?どうせ食べた後にここで将棋指しに来るんじゃ。ここで食べた方が手間が少ないわい。」
「俺の買ってきてる材料費がタダじゃねぇんだがなぁ……」
この男がここに就職する際に唯一付けた注文がコレらしい。『施術室の隣にキッチンを付ける』……仕事関連の注文ではないので妙だとは思ったが、疑問はすぐに解けた。この男は料理が上手い。それこそプロと遜色ない程に。私も何度か付き合いでこの男の料理を食べたが、同じレベルで作れるか?と聞かれると自信がない。私も元帥と結婚しているからな、妻として食事の用意をしてはいたが、ショックだったよ。
「仕方ねぇなぁ……。」
男はのっそりと立ち上がると、キッチンの方に歩いていった。私は元帥と顔を見合わせて笑ってしまったよ。なんだかんだと文句はつくが、この男は面倒見がいいのだ。
何を作っているのか気になって、キッチンの方を覗く。お湯を沸かしながら電子レンジでアジの開きを2匹温めている。
「観察していてもいいか?」
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