第43話『災厄』
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晴登は普通に応対するが、子供扱いが滲み出ている発言に、ユヅキは少しムッとしていた。最後の言葉も仕返しの意だろう。
「はっ、恐くねぇよ。大人をナメんなよ?」
鼻を鳴らしながら、親指を立てて余裕を宣言するラグナ。そのあまりに堂々とした態度に、少なからず感心してしまう。
ユヅキも納得したのか二の句は継がなかった。
「じゃあここからの動きだが・・・まず大通りの様子だけでも確認してぇ。ウォルエナがどれくらい来てるのかも把握しねぇとだし」
「なら何で裏口を使ったんですか」
「成り行きだよ。でもって、今さら店に戻んのもあぶねぇし、そもそもここに留まるのも危ない。別の場所から確認してぇな」
ラグナの意外ともいえる作戦に、2人は納得の表情をする。
となると、まず監視に適した場所に向かわなければならない。土地勘のない晴登は、この場合戦力外だ。
「ウォルエナの被害を受けないためなら、高い所が良いんじゃない?」
「それだ。だが俺の店の屋上じゃ高さが足りねぇから・・・」
「だったらあそこしかないね」
「みたいだな」
「え、どこ?」
「ハルトはついてきて」
戦力外も戦力外。完全に蚊帳の外で話が決まる。しかし晴登はそれに納得するしかない。
3人は決まった目的地へ向けて走り出した。
*
目的地は、店から数分の距離にある高台だった。元々高低差のある王都ではあったが、ここは周囲と比べると特別に高い。近くに公園もあり、普段ならば穏やかな雰囲気の観光スポットだと思われる。
そんな高台から見える景色なので、それはそれはさぞかし絶景で──
「…こりゃやべぇな」
「うっ…」
「ウォルエナが、あんなに…」
予想とは裏腹な惨状を前に、3人は戦慄を隠せない。
ここから見える範囲、恐らく王都の南側だけだが、その視界の全てにウォルエナの姿が映ったのだ。
しかも所々には人間の姿も。ウォルエナに襲われる人々が大勢見えた。
「酷い…」
「人喰いがこんな大都市に来ちまったんだ。仕方ねぇ」
ユヅキが洩らした言葉に、ラグナは投げやりに言う。
しかし、その発言を晴登は聞き逃せなかった。
「仕方ないって…いくらなんでもその言い方は・・・」
「そのまんまの意味だろうが。早く逃げねぇとここも危なそうだぞ」
「う……はい」
ラグナが正論だと判断した晴登は、渋々承諾する。
しかし、王都に被害を出さないため奮闘した、さっきの時間は何だったのだろうか。
現時点で、既に被害者も出ている。助けに行きたいのが本音だが、心のどこかでは逃げたいと少なからず思っていた。
「とりあえず状況は分かった。後は西か東
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