第二十五話 最後の言葉その一
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第二十五話 最後の言葉
王の衰えは最早誰の目にも明らかだった、碌に王の間に出ることも出来なくなってだった。床に横たわることばかりだった。
そしてだ、その床で政を見ていた。その王にだ。
側近達は薬を飲んでもらうがだ、一向にだった。
「駄目だな」
「うむ、お身体が戻られぬ」
「悪いままだ」
「むしろ日増しにだ」
「お身体が悪くなっておられる」
「最早な」
「幾許もない」
そうした状況だとだ、誰もが思っていた。それでだった。
新教徒達も旧教徒達も王の後のことを考えていた、既に王子が太子に立てられ次の王になることが定められているが。
この国の主導権をどちらが握るか、そのことを考えて動いていた。
今や旧教の領袖になっている太子は今はこの国の旧教の諸侯達に対して言っていた。
「よいか、兵は動かすな」
「決してですね」
「兵を動かさず」
「その他の手段で、ですか」
「ことを進めていきますか」
「そうだ、新教に勝ちたくばだ」
彼等の願い通りにだ、そうしたければというのだ。
「兵ではない、書だ」
「書ですか」
「そちらですか」
「旧教を学び新教も学ぶ」
その双方をとだ、太子は言う。その後ろには彼の側近達だけでなくオズワルド公と司教も共にいる。特に公と司教は彼のすぐ後ろにそれぞれ左右でいる。
「そしてだ」
「そのうえで、ですか」
「旧教も新教も知る」
「そうすべきですか」
「そうだ、そしてだ」
どちらも知ったうえでというのだ。
「新教の者達と論争を行い」
「そしてそのうえで」
「新教徒達を論破する」
「そうすべきなのですね」
「そういうことだ、兵を挙げて勝とうともだ」
それでもというのだ。
「教えは残る、それこそ十字軍の様に徹底しなければな」
「十字軍ですか」
「あの時の様に」
「王国の十字軍を思い出すのだ」
彼等の宿敵であるこの国の、というのだ。
「あの十字軍は今の王国の南部に向かった」
「そのうえでその一帯を彼等の領地にしました」
「その様にしました」
「それを見るのだ」
こう言うのだった。
「その時王国は多くの者を殺した」
「異端とみなした者達を」
「正しい信者であろうとも」
「徹底的に殺しました」
「目に入った者達を」
「まさに誰彼なく」
「神が見分けられる」
太子はこの言葉も出した。
「教皇庁が言ったな」
「はい、はっきりと」
「その時に」
「そして異端を殺せと」
「疑わしい者も含めて」
「そしてだ」
その現在の王国南部への十字軍はというのだ。
「彼等は暴虐、残虐の限りを尽くした」
「神の名の下に」
「その領地を攻め取っていきました」
「異端だけでなく数多くの民も殺し」
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