第六十話 憩う
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適当にそれらをつまみながら酒を飲み進める。……あくまでもチビチビとだ。自分の酒癖が悪いということはあの結婚式に十分自覚させられた。二日酔いの苦しみと、自分が下手すれば結婚式をぶち壊しそうになったことに対する申し訳なさにも。
「ま、でも最近のミレイちゃん見てると苦労しているというか疲れているというかそんな感じするわね。レックス王子もよ。人間、危機感を持つことは確かに大事よ?でもたまには息抜きもしておかないと」
「息抜き、ですか……」
「そう。体に溜まっている悪いものを定期的に抜いておかないと、ダメになるからね。自分はまだ大丈夫だと思って無理すると潰れちゃうから、一回は息抜きしておいた方がいいんじゃないかしら?」
確かにここ最近苦労することが多くなったなと思う。『影響』や光の教団との戦い、アベルとビアンカの救出、レックスとタバサの指導……と色々と考えることや、やるべき事が山積みになってきた。1日の殆どがやるべき事で占められ、気がつけば自分の時間はほんの僅かになっていた。
思えばこうして酒場に通い始めたのもレックスとタバサの教師になってからだ。
「そうですね。息抜き、してみます」
「それがいいかもね。ミレイちゃんもレックス王子もほんの1日でいいからしっかり休んでおくべきよ。あ、でも休みすぎてもダメだからね」
「わかってますよ。……ルイーダさん、ありがとうございます」
私がお礼を言うと、ルイーダさんは優しく微笑んだ。
「いいのよ、別に。こうして客とコミュニケーションをとる事が私の仕事なんだから。ミレイちゃんも息抜きしたら、頑張りなさい」
*
翌日。
私はオジロンさんに頼み込んだ結果何とか1日だけ休みを手に入れる事に成功して、そしてその日は授業も休みにして、2人(というよりは主にレックス)に息抜きさせる事にした。
「偶には休む事も大事だから、今日は授業は無しね。その代わりと言ってはなんだけど2人共私と出掛けないかしら?」
私がそう言うと、レックスはどことなく嬉しそうな顔になっていた。
自分の苦手を否応なく痛感させられる魔法の授業が無い事が、レックスにとってはとても嬉しいのだろう。……こうも露骨に楽しそうにされると教師としてはやや複雑だが。
「楽しそうだから一緒に出かけようよ、タバサ!」
「そうね。では、お言葉に甘えて一緒に出かけさせていただきます、ミレイ先生」
断られたらどうしようかと考えていたけれど、とりあえず話に乗ってきてくれて良かった。
「それで……、どこに行くんですか?」
「それは着くまでのお、た、の、し、み」
タバサの質問に私は敢えて答えず、意味深な笑みを浮かべた。
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