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ドラゴンクエストX〜イレギュラーな冒険譚〜
第六十話 憩う
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 それは特典の力を利用していた私とは違って、純粋にタバサ本人が持っている才能で身につけた力だ。そしてその才能を持ち前の勤勉さで磨き上げることで身につけた力。

「大分早いわ。凄いわね、タバサ」
「ありがとうございます、先生」

 私はタバサを褒めた後に、落ち込んでいる様子のレックスを励ました。

「タバサは魔法が得意だからあっさり成功させちゃったけど、普通だったらそんなすぐに身につかないから気にせずに自分のペースで練習し続けたらいいわ」
「はい。次頑張ることにします」

 レックスはそう言っていたものの、その後の魔法の指導でも中々成果が実らなかった。
 どちらかといえばレックスは魔法より剣の方が得意だから仕方はないとはいえ、そろそろホイミを習得してもらわなければまずいかなと私は危機感を感じ始めていた。レックスも危機感を感じていたのかよりホイミの習得に打ち込むようになっていったけど、焦りからか前よりも失敗する回数が多くなってきた。
 一方でタバサの方は魔法の実力をメキメキと伸ばしていき、ラリホーやマヌーサを習得しイオも十分とは言えないけれども初めてにしては大分扱えている。
 タバサの方は心配はないけれど、でもそのことがレックスの焦りにより拍車をかけてしまっているのか気がつけば均等に2人の魔法の実力を伸ばすつもりが、大分差がついてしまった。


 *

「私、どうしたらいいんでしょう」

 ルイーダの酒場で私は酒を飲みながら、女店主のルイーダさんにそうぼやいていた。

「どうしたらいいもこうも私はアドバイスできないわね。それはミレイちゃんの問題で、レックス王子の問題でもあるから。私はああしろともこうしろとも言えないわね」
「でもそろそろ出発の日にちが迫ってきています。それまでに何とかレックスがホイミくらいまでは習得してもらわないと困るんですよ……」
「生徒が何かが出来ないんだったら、それをしっかり出来るようにしてあげるのが教師じゃないの?」

 確かにそれを言われてしまっては何も言い返せない。教師というのは生徒に何かを教えて出来るようにする仕事で、そして私はその教師だ。
 だから私はレックスに魔法を教えて、レックスが魔法を使えるようにしなきゃいけないのに。
 元の世界にいた頃は学校や塾の先生を教え方が悪いだの授業がダルいだの散々に言ってたけど、自分が教える立場になってみる事で教える側も教える側で色々大変だという事を痛感させられた。
 でも、痛感させられましたはいお終い。じゃ、だめな訳で……。

「色々苦労しているのね、ミレイちゃんも」
「というより皆大なり小なり苦労はしていますよ」
「確かに。それもそうね」

 ルイーダさんは軽く微笑んでから、私につまみとしてナッツやチーズを差し出した。

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