第六十話 憩う
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なった哀れな木材はバラバラに砕け、破片が燃えだす。
草原に火が移って火事にならないようにさっさとヒャドを唱えて消火した。
「ま、ザッとこんな感じね。魔法の使用に慣れてくればより短い時間と高い精度で発動できるようになるわ」
「すごいです、先生!」
「僕も早く使えるようになりたい!」
はしゃぐ2人に、微笑ましい気持ちを感じつつ私は2人に指示を出した。
「じゃあタバサはヒャドの呪文の練習ね。実験台はまだ木材が幾つか残っているからそれを使って。やりかたはさっき私が教えた通りだから後は氷のイメージを強く思い浮かべればできるはずよ。それでレックスはホイミの呪文の練習ね。実験台は……私でいいわ」
「先生でいいんですか?」
おそるおそるといった感じでレックスが尋ねた。
まぁ、無理もないだろう。初めて使う魔法の実験台が人なのだから。
「安心して、レックス。ホイミは回復呪文だから私が怪我するといったことは無いから。頑張って」
「ミレイ先生がそう言っているんだから頑張ってねお兄ちゃん」
タバサにも応援されたのが良かったのか、レックスはとりあえずさっきまでの怖気付いた態度を止めて私に向き合った。
「よろしくお願いします。先生!」
「よろしくね、レックス」
「それじゃあ、ホイミ!」
レックスが手をかざして、詠唱した。
これまでに幾度となく見た回復呪文の金と青緑の光が手のひらから放たれて私に降りそそ……がなかった。
理由はレックスの魔法が私に当たる前に終了してしまったからだ。
「まぁまだ1回目だし。ホイミ!」
今度のホイミは金と青緑の光がレックスの掌に集中してーー霧散した。
「ホイミ!」
3回目は私に当たりこそしたものの何の効果も発揮しなかった。
その後4回目、5回目と続けてレックスはホイミを唱えていたけど結局どれも成功しなかった。
「まぁ全部失敗してもまだ最初なんだから。そのうち練習していればできるようになるわ」
「そう……ですね」
レックスは少し落ち込んでしまっているようだった。
年齢が年齢だから落ち込むのも無理はない。私も子供の頃は何気ない些細な失敗で落ち込んでいた。
「先生、終わりました」
「もう?随分早かったわね。それで結果はどうだった?」
するとタバサはこの時を待っていましたとばかりに笑顔でこう言った。
「全部成功でした」
「全部!?」
木材の方を見やると、確かにヒャドの一撃を受けて砕けた木片がそこらへんに転がっていた。
ヒャドがいくら基礎呪文といってもいきなり魔法を完成した形で使うなんて、そう簡単に出来ることではないのに。
こうして教え子の実力を見ると、彼女は本物だなと思わせられることがよくある。
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