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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十五話 余波
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値が有るだろう。表紙には“極秘”とスタンプが押されていた。普段なら馬鹿な官僚が訳も分からずに押したのだろうと毒づくところだが今回はそれを押すだけの価値はある。

「以前君は言ったな、リヒテンラーデ侯とヴァレンシュタイン元帥の協力体制は盤石だと……」
「ああ、言ったな」
「その理由が同盟を征服する、正確には宇宙を統一するためとはね。驚いたよ」

報告書によれば両者は内乱を乗り切るために一時的に手を結んだというわけではない。国政改革も貴族達を暴発させるためだけに行うのではなく、同盟の征服を考慮しての事だと書かれていた。いや、それ以上に門閥貴族の存在そのものが宇宙の統一には邪魔になると両者は判断したのだろう。

リヒテンラーデ侯が何故改革を認めたのか、ようやく分かった。シャンタウ星域の会戦で同盟軍は著しく弱体化した。宇宙の統一が可能になった。だから同盟が帝国の支配を受け入れやすいように邪魔なものを切り捨て、必要なものを取り入れ始めた、そういうことだろう。

劣悪遺伝子排除法が廃法になったのもその所為だ。意味の無い、名前だけの法律……。ルドルフが作成したから名前だけ残っていた法律だが、その名前さえ存続を許されなくなった。帝国は本気だ、情報の確度はかなり高い。

「レベロ、帝国との和平は難しいかな、どう思う?」
「……難しいかもしれん。しかし諦めるべきじゃない」
「……そうだな、戦備を整えつつ和平の機会を窺うか……。難しい舵取りになるな」

トリューニヒトが憂鬱そうに呟く。トリューニヒトが疲れたように見えるのは報告書の件もあるのかもしれない。帝国は国家目標がはっきりしている、そして着実に国の体制を整えている。それに比べて同盟は……、憂鬱にもなるだろう。

「トリューニヒト、先ずは捕虜交換を片付けよう、そうすれば軍の戦力は上がる」
私の言葉にトリューニヒトが頷いた。彼が議長に就任してまだ一年に満たない、しかしトリューニヒトの髪には白いものが混じり始めている。戦争だけが戦いじゃない、政治だって戦いなのだ。負けるわけにはいかない……。




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