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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十五話 余波
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共同会見でもレムシャイド伯は堂々としていた。恰好良いとは思うけど面白くない、一度面目なさげな伯爵を見てみたいと思う。
会見終了間際、レムシャイド伯は席を立ちながらさらっとトンデモナイことを言った。“帝国は劣悪遺伝子排除法を廃法にする”。会見を取材していた記者たちも一瞬何を言われたのか分からなかったみたいだ。分かった時にはレムシャイド伯は会見場には居なかった。皆大騒ぎだった。多分伯爵は何処かでそれを見て楽しんでいたんだろう、嫌な奴だ。
劣悪遺伝子排除法って、簒奪者ルドルフが作った法律で人民を弾圧し迫害することになった法律だ。自由惑星同盟が誕生したのもこの法律の所為だと言う人もいる。今ではほとんど意味を持たない法律らしいけどルドルフが作った法律だから廃法には出来なかったようだ。
それが今回廃止される……。今日のニュースは捕虜交換よりも劣悪遺伝子排除法が廃止されることばかりを取り上げていた。帝国は変わったと言っていたけどどういうことなんだろう、ちょっと良く分からない。帝国との講和とか言ってる人もいたけど意味のない法律を廃止するだけで和平を結ぶの? 馬鹿馬鹿しい、帝国相手に和平なんてありえない、何考えてるんだろう……。
宇宙暦 797年 8月 20日 ハイネセン 最高評議会ビル ジョアン・レベロ
「とりあえず終わったな、トリューニヒト」
「ああ、終わった」
私の目の前でトリューニヒトは疲れたような声を出した。実際に疲れているのだろう。今回の一件では随分と忙しい思いをした。
同盟の政官財界には色々な考えを持つ人間が居る……。捕虜交換の実現を心配する者、戦争を望む主戦派、帝国との和平を望む者、そしてフェザーンを支配するべきだと考えている者……。
それらがマスコミに自分の意見を伝え、マスコミはそれを報道する。市民がどの程度自分の考えを支持するか確認しようというのだろう。そしてその度にマスコミは政府の考えを、トリューニヒトがどう考えているかを聞きに来る。トリューニヒトにしてみれば連中の考えが分かるだけにうんざりするのだろう。
「アラルコン少将の取り調べはどうなっているんだ?」
「始まったばかりだ、ボロディンからはまだ報告はない」
アラルコン少将に協力者がいるのか、居るとすれば誰なのか、どこまで広がっているのか……。主戦派だけの企みなのか、それとも他に別な思惑を持った人間が居るのか……。終わったのは帝国との紛争の後始末だけだ。同盟ではこれからが本当の後始末が始まる。
「レベロ、例の報告書だが君は見たか?」
「ああ、見たよ。なかなかショッキングなことが書いてあったな」
「ああ」
例の報告書、軍の情報部が亡命者達から得た帝国の情報をまとめたものだ。多くの貴族、軍人達から聞き出した情報は千金の価
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