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珠瀬鎮守府
響ノ章
写真帖
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ことを思い出す。否、それだけではない。敵として相まみえた者達が、嘗て横に居た誰かと言う事を認識させられる。忘れたわけではなかった。でもここまで事細やかに認識したこともなかった。
「之を忘れぬがまま戦うのか奴は……否、現に戦ったのか、柏木という奴は」
 姫の言葉を聞きながら思い出す。忘れてはいけないものと言った以上、白木提督はこれを全て覚えている。否彼だけではない。柏木提督もだ。珠瀬海戦の際、提督は自ら戦艦と相まみえた。私は戦艦としか思わなかったが、柏木提督はきっとこの中の誰かと、顔の浮かぶ誰かと分かっていたはずだ。その上彼は戦った。そうして殺した。
「嘗ての部下を殺す……想像もつかんな」
 生きていた誰かを忘れずに、生き返った誰かを殺す。彼はどんな気持ちだったのか。私のように、嘗ての仲間を殺すという曖昧なものではなく、一人一人の生き様を覚えて、一人一人をまた部下によってもう一度殺させていくのは。
 そうしてその道をまた歩むと言った白木提督は、どのような気持ちで姫と接して居たのだろう。
「けど、これは……きっと、私も忘れてはいけないものだよ」
 提督だけが背負う物ではないはずだ。これはきっと、此処にいる皆が知っておかなければならない事。死者を思い、屍の上に立っている事の再認識。
「私が口を出す事ではないだろうが、それは違うと思うぞ。お前たちが忘れずに居ることは唯一つでいいはずだ」
「それは、なんだい?」
「お前達は提督によって殺される」
 突然に手を出さなかったのは、目の前に開いた写真帖のおかげだろう。彼女達の前で姫と、深海棲鬼と話すよりは醜い争いをするほうが辛い。
「何故」
 だがそれでも、姫を睨みながら言う。
「お前達は何故戦うのか、それは置いておく。お前達は何故戦えるのだ? 武装し海原に立てる理由は? それは、提督が命令したからではないのか?」
「そうだよ。だけど私達が死ぬのは深海棲鬼と戦い……殺されるから」
 言いながら、その事に気がついた。深海棲鬼とは、果たして誰の事だったのか。
「鬼は艦娘ぞ。お前達と私達は、広く視野を持てば究極的には同士討ちだ。では、その争いの場を用意するのは提督ではないのか?」
 頭を振る。そういうことではない。そんなわけがない。これは全て、提督のせいだなんて。
「違うよ。戦争で上司だけが悪いなんて話ありえない。それに、戦わなくても殺される」
「そこではない。誰が艦娘を編成し、艦娘を兵装し、艦娘を指揮する? 鬼は直接的な死亡原因だ。ただその状況をお膳立てしたのは誰だ? 提督こそがお前達にとっての死神だろう?」
「否(ちがう)、断じて否(ちがう)!」
 姫に剥き出しの敵意を向ける。
「この殺し合いは提督の手によって作られる」
「何故貴方が其れを言う? 提督を憎んでいるの?」
 姫は
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