響ノ章
写真帖
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いると思えばそんな事も無く倒れるとは。暇はそうだが目覚めが悪い」
ああ、実は姫暇だったのか。
「伝えておくわ。それじゃ、二人共」
そう言って鳳翔さんは去っていく。部屋掃除をどうか尋ねれば良かったと僅かに思ったが、鳳翔さんはまだ色々と忙しいだろう。昼間、艦娘達皆を見ているのは秘書艦である彼女だ。
「では取り掛かろう」
暫くして、昼食を取り終えた姫は部屋を出る。扉を開けて廊下を伺い、誰も居ないことを確認してから移動する姫は、それが正しい行いだとしても何だか可笑しい。私もそれに続いて廊下に出て執務室へ向かう。中に入り室内を軽く見て、机に付いた染みやその上に薄ら被った埃に目が行く。殆ど人の出入りはなさそうだ。
「思ったより埃が溜まっているな。掃く程度の軽い運動のつもりだったが思ったより掛かりそうだ」
掃除すると言った手前最後までやり切る気なのか姫は言う。私は彼女に一言言って部屋を出て廊下の端、掃除用具が入れてある場所に向かう。あまり姫を室外に出すのは良くない。私は桶(バケツ)に水を入れた後、他の用具も持って部屋の前に戻る。一旦用具を置いて執務室の扉を開けた時、姫は提督の机に置かれた一冊の、厚みのある写真帖のようなものを捲っていた。部屋に私が入ってくるのと同時、それを姫は直ぐ閉じる。
「何しているの?」
「いや、そのな、埃を叩こうと思ったのだ。それで落としかかって、中身が見えてな。悪気はない。それに業務には関係がなさそうだったのでな、少し見てしまっていた」
姫は焦っていた。私はそれに驚く。僅かに感情を見せることは今まであったが、ここまでの事はなかった。
「そう。それ、ちょっと貸して」
姫は関係のない本と言っていたが、一応は確かめなければならない。
「お前、これの中身を知っているのか?」
姫の質問に、もう一度写真帖のようなものを見る。確か、これは以前鳳翔さんが抱えていたものだ。あの時は鳳翔さんに尋ねたが、鳳翔さん自身中身は知らないらしかった。ただ、これを白木中佐の元へ持っていく、そう言っただけだった。
「否、ただ結構大事な物ということは知っているよ」
「大事な物? それは提督がか?」
「……白木提督の前、柏木提督から白木提督に託された物、じゃないかな。憶測だけど」
そうとしか言い様がない。珠瀬海戦の戦場の中、鳳翔さんが持って行く程のものだから。
「そうか。私が見た事は伝えて良いが、お前は読むな。そのまま提督の元へ持っていけ」
「何故だい? 見たんだろう? 機密情報かもしれない」
その事に姫はまた表情を変える。見てしまったのがばつが悪いのか。
「それをお前達に見せていないのは理由があると思う。兎角見るな」
「そうは行かない。此処には私しかいない。ちょっと今の事があった上で信用は出来ないよ。ここで私が判断する。
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