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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―
第三章
三十一話 刹那の妙技
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が腕を交差するように左右に押し出したことで割り砕かれる。

クラナ・ディリフス・タカマチ DAMAGE 320 LIFE 2640
クラッシュエミュレート 両掌、軽度裂傷多数。

「(く……!)」
会心の一撃が失敗した事を理解してクレヴァーは歯噛みして再び幻影を下げて身を隠しにかかる。が、その僅か一秒後、その判断が失敗であったことを悟った。

少なからず、動揺していた所為もあったのだろう。交差し、自分を抱きしめるように肩に当てられたクラナの両拳の先端に、緑色の魔力球が出来上がっていることに気が付くまで、“それ”に思い当たらなかったのだから。本来ならば、真っ先に気が付くべきだった、気が付かなければならなかったのだ。
そう、“素手で魔力に触れられた”という事は……!

「!しまっ……!」

────

……正直、今でも試合中に笑うということに対して、躊躇を覚えることが無いわけではない。「笑う」という表情はどこか、真剣さと対極にある表情の一つであるようなイメージが、今も彼の中にはあるからだ。
だが、五年前、この大会に初めて参加する前、練習中に母であるアルテアは言った。

『練習中にあまりヘラヘラ笑っちゃダメだよ。気を抜いたま練習すると、ケガをしやすくなるし、真剣に学ぶ気が無いようにとられる』
正直なところ、そう言われた時クラナは、自分が笑っていることに全くと言っていいほど気が付いていなかった。そういうと、今度は彼女が笑ったのだ。

『あぁ、それはまぁ悪いことじゃないわね。それは、ホントにアンタが格闘技が楽しいってことだから』
『うん!楽しいよ!』
『けっこーけっこー』
パッと笑いながら自分を撫でてくれたあの時の表情を、今も鮮明に覚えている。でもね、とアルテアは続けた。

『それでも、練習中に笑うのは時々にしなさい。気を張りながらやった方が身になるわ』
『じゃあ、格闘技やってるときは笑っちゃダメってこと?』
『うーん、そうねぇ……』
人差し指を顎に当てて軽く小首をかしげてから、彼女は少し考え込んで、そして返した。

『例えば、試合をしてる時、どうしても我慢できなくなったら、笑っちゃいなさい』
『いいの?』
『うん、いいわよ。それで何か言われることもあるかもしれないけど、試合の時は自分の全部を出した方が良いの。それに、覚えた事を競い合うことが楽しいのは普通の事だから、そういう時は、もう笑っちゃったほうが良いわよ』
『よく分かんねーけど分かった!』
『どっちよー』
ニコニコと心底楽し気に笑いながら、再び彼女は自分を撫でる。

──あぁ、そうだ……──
自分は、それが楽しくて仕方がないのだ。他人と自分の技を競い合い、ぶつけあう事が、楽しかったのだ。ずっとこの場所から離れていたから忘れかけていただ
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