ターン62 蹂躙王と墓場の騎士
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膨れ上がってくるのを感じながら、遥か上のベージを問い詰める。
そしてそんな僕に答えるのも楽しくてしょうがない、といった様子を隠そうともせず、ゆっくりと気取った様子で話し出した。
「では逆に聞きますがね。そもそもあなた、本当に何も起こらないとでも思っていたんですか?」
「え?」
「この分厚い雲が光を遮っているから、降り注ぐあの赤い光の影響も受けずにすむ……もしそんな浅はかな考えでノコノコとこの場所に出てきたのでしたら、それはお笑いですねぇ。考えてもごらんなさい、ここは我々悪魔の居城。そんな場所なのですから、当然この雲は数百年以上晴れたためしがありませんよ。にも関わらず、この雲が常に空を覆っているにも関わらず、私達はこうしてあの光の力で悪魔としての本分、つまりこの破壊と侵略の喜びに目覚め、ここにいらっしゃる偉大なる覇王様という素晴らしい指導者も得た。ここまで言えば、もうお分かりでしょう?」
「それじゃ……まさか、あの隕石は……」
「その通り。光が地上に届こうが届くまいが、あの美しい血のように赤い光の力にはなんの関係もありませんねぇ。今はちょうどあなたのご友人、我らが鬼神も自らのくだらない理性と悪魔としての荒々しい衝動との間に揺れ動いているようですが、すぐにその戦いも終わるでしょう」
油断していた。ケルトが森の中に隠れてあの隕石の影響を受けなかったのは光を浴びなかったからではない、単にまだ光を浴びた量が少なかったからか。これは光を浴びていないから正気でいられるという本人の言葉をなんとなく信用し、ろくに確かめもしなかった僕にも責任はある。それにしても、このベージの物言いには少し引っかかる。光の力というこのワード、それにこの光への心酔っぷり。斎王……いや、さすがにないだろう。破滅の光はあの時、斎王を倒して確かに消滅させたはずだ。
「ううぅ……おい、よく聞け!」
苦しげな、低いケルトの声。僕に向けて何かを伝えようとしているその様子に、慌てて背後の彼に向き直る。どうにか痛みと苦しみのピークは過ぎたらしく、もう先ほどまでのようにのたうち回ってはいない。
「俺は、もう駄目だ。これ以上は耐えきれそうにない」
「な、何を……」
「黙って聞け馬鹿野郎!」
切羽詰まったケルトの気迫に押され、口をつぐむ。代わりに再び話し出したケルトの言葉を聞き洩らさないよう、集中して耳を傾ける。
「悪いな、ドジ踏んじまってよ。だが最後に、お前にひとつ頼みがある。俺にこの場で、なんとかしてとどめを刺せ……ああ、何も言うんじゃねえ。文句言いたいのは山々だろうがな、もう俺には俺自身が止められそうにない。俺は多分、今からお前を殺しにかかるだろう。だからお前は、それをなんとかして止めろ。そしてお前だけでも生き延びて、なんとか元の世界に変えるんだ。い
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