ターン62 蹂躙王と墓場の騎士
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ルトがこの人間をぶち殺してやるぜえぇっっ!!」
うおおおお、と割れんばかりの歓声が闘技場全体に響いた。その興奮のどさくさにまぎれ、急にたった今の叫びが嘘のように冷静さが戻ってきたケルトが僕にあることを耳打ちする。
……なるほど、そういうことね。ややあってピンと来た僕も、気乗りしない風を装いながらデュエルディスクを起動させる。数日ぶりに使うディスクはまだ調子が悪いままでなんとなく異音が聞こえてくるけど、まあよほどのことがない限り大丈夫だろう。
「それでは皆さん、ご覧下さい!彼らは我らが敵ですが、その実力はともに確か。どちらが勝利を手にするか、賭けをなさる方はお早めにお願いいたします!」
ベージの声を背後に聞き、仮にも命のやりとりであるこの世界でのデュエルモンスターズを賭けの対象にして笑いだすその神経に顔をしかめる。
まあいいさ、今はデュエルだ。そして、周りの様子に神経を使わなくては。ケルトもまた僕の方を見据えるふりをして、さりげなく周囲の警戒の薄い部分を探っている。
「「デュエル!」」
「先攻は僕が貰った!僕のターン……これでターンエンド!」
「こりゃあ傑作だ、あの人間はドローゴーだってよ!」
「まともなデッキも組めないガキは、おうちに帰ってママのミルクでも飲んでなぁ!」
何もせずのターンエンド宣言に、客席から嘲りの声と嘲笑が聞こえてくる。努めて気にしないようにするけれど、それでも顔が怒りで赤くなるのを感じる。治安度の悪い童実野町でたっぷり鍛えられたおかげで母親関係のことを言われるのは慣れたつもりだったけど、久しぶりに聞くとやっぱりまだ駄目らしい。
怒りを力づくで抑え込み、ケルトから見えるように壁のある一点を視線で示す。ややあって、向こうがゆっくりと首を横に振るのが見えた。そして即座にそれを誤魔化すかのように、必要以上の大声でカードを引く。
「俺のターン、ドローだ!カードを1枚セットしトラップカード、幻影騎士団シェード・ブリガンダインを発動するぜ。このカードはトラップだが、俺の墓地にトラップが存在しない場合のみセットしたターンでも発動が可能となる。そして闇属性レベル4、攻撃力0守備力300の通常モンスターとして特殊召喚されるぜ」
日陰者の鎧。自身が表に出てきて亡霊の姿をむき出しにしていたシャドーベイルとは違い、その名が示すごとく鎧の中にその身を潜める幻影となった騎士の目の光が灯る。
幻影騎士団シェード・ブリガンダイン 守300
「さらにカードをセットし、ターンエンドだ」
「おいおい、鬼神がビビってんのかぁ〜?」
「レベル低いデュエルだなあ、もっと面白いことやれよ!」
僕とは違い、またまた飛んできた嘲笑も涼しい顔で聞き流すケルト。早くやれ、と
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