ターン62 蹂躙王と墓場の騎士
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いのやいのと言いながら、森を離れて街に近づいていく。この近くは常にかかっている分厚い雲のおかげで頭上の赤い彗星は隠されている、その光を浴びる危険がないためこうしてケルトも普通に出歩けるのだ。
……後になって思えば、なぜそんな結論に達したのかが本当にわからない。そもそもそんな浅はかな考えが仮に正しいのだとしたら、なぜ他の暗黒界はみなおかしくなってしまったのか。なんだかんだ言っても数百年ぶりの故郷に浮かれぎみだったらしいケルトはともかく、本来一番警戒しなければいけない立場にもかかわらずそんなことすら考えつかなかった僕の馬鹿さ加減は、すぐ後でたっぷりと呪うことになる。
しかしその時はそんなこと考えすらせず、フードをなるべく目深に被ってうつむきがちにしながらケルトの後をついていくだけだった。
そんな僕が最初に異変を感じたのは、街に1歩入ったその瞬間だった。それなりに広い道の両端には民家らしき家が建ち並び、それなりに生活感もある……のだが、なぜか誰もいない。人や悪魔どころか、鳥の1羽や犬猫の1匹すら通りを歩いていない。ケルトもかすかに眉をひそめているところを見るとこれが日常風景というわけでもないらしく、なにかただならぬことが起きているらしい。なんとはなしに顔を見合わせて呆然としていると、少し進んだ先にある十字路の部分に人影が現れた。
「おい、ちょっとそこの……」
ケルトが声をかけるかかけないかのうちに、向こうもこちらの存在に気が付いたらしい。ビクッとした様子で立ち上がると、脇目もふらず今来た道をそのまま逃げ始めた。
「お、おい!?なんだってんだこん畜生、追っかけるぞ!」
「合点!」
とにかく誰かに話を聞かないことには、この町のただならぬ様子のわけは掴めない。僕らが同時に1歩を踏み出した次の瞬間、足元を軸にいきなりの飛翔感が全身を包みこんだ。なぜか天地が逆転し、頭の上に地面がある……と、そこでようやく自分が宙吊りになっていることが理解できた。と同時に、暗黒界の軍勢に完全に一杯喰わされたことを悟る。まさかこんな単純な手に引っかかるとは、なんて考えてももう遅い。
「ななな……!」
「クソッたれがあっ!」
すぐ隣では、僕と同じようにケルトが宙吊りになって暴れている。だけどケルトには僕と違って強靭な翼がある、それを開けば……ということを指摘しようとした時、地面から2本の黒い鎖が伸びてきた。ぐんぐん伸びるそれの片方がケルトの体を、次いでもう1本が僕の体をがんじがらめに縛りつける。一見ただの鉄製に見えるそれが肌に触れた瞬間、みるみるうちに全身から力が抜けていった。
「こ、これは……」
「デモンズ・チェーン。無駄さ、その鎖はあらゆる相手を縛り付けて特殊能力すら無効とする力を持つ魔の鎖。いくら暴れても切れるわけないだろう
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