ターン62 蹂躙王と墓場の騎士
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ケルトと出会ってからの森を抜ける旅は、それまでの強行軍とはまるで違うものだった。細かな点はいろいろとあったが、何よりも会話相手がいたという点が大きい。たった1人で暗黒界の拠点のはっきりした場所もわからずに何となくの方向だけを頼りに彷徨い続けていたあのころと比べると、今はまるでVIP待遇でも受けているかのようなぬるさだ。それに人数が倍になったことで、交代で眠る余裕さえ出てきたのも素晴らしい。実際この数日間に、荒んでいた僕の心にもだいぶ余裕が出てきた。木の実を採って食べたり、近くの川から魚を獲って焼いて食べたり、ケルトが見つけた薬草から僕らの世界には存在しない薬、ゴブリンの秘薬と呼ばれる苦い粒を収穫したりもした。
だが、どんな旅にも目的がある以上必ずゴールが存在する。僕らにとってもそれは例外ではなく、ついにその時は訪れた。
「ようやく出たな。俺がいた時と何も変わっちゃいねえ……あれが暗黒界の中枢だ」
森が唐突に途切れ、急に視界が開ける。目の前、といってもまだ数キロは向こうに広がっていたのは、恐ろしく巨大な城だった。分厚く重苦しい城壁で囲まれたその周りには、まるでそれ取り囲むように小規模な城下町が広がっている。流石に悪魔の城、その上空には馬鹿みたいに分厚い雷雲も常備されているのがなんだか妙におかしかった。
「あれが……」
「おう。さてと、お前もなにか上着かなんか着たほうがいいな。その赤い服じゃいくらなんでも目立ちすぎだ」
言いながらケルトがマントを引っ張り出し、全身に巻きつけるようにして体を隠す。巨体なうえに翼や角まで生えているケルトが正体を隠すにはとてもじゃないが十分とは言い難い代物だが、そもそもケルトの場合元々この場所の出身だからこの程度でいいのだろう。それより問題は僕で、言われて初めて気が付いたが確かにこのオシリスレッドの制服は遠くからでもよく目立つ。1人だった時には自分の服が赤いのはわかっていたけど、だから目立つだろうというところまで考えが回っていなかった。
だからあれだけ付け狙ってくる連中に見つかっていたのか、と自分から強行軍をハードモードに引き上げていたうかつさに舌打ちし、パッと思いついた上着を引っ張り出す。何もない空間からいきなり構成される灰色に紫の模様が入ったフードつきローブ……要するにダークシグナーとしての神官服だ。この服が5000年前にあれだけの大虐殺と共にあったことを思うと吐き気を催しそうにはなるが、この際背に腹は代えられない。全身を包むデザインなうえにフードで顔まで隠せるから、実際個人的な感情に目をつぶれば悪い選択ではないだろう。
「よし。まずは酒場でも行くか?景気づけに一杯やろうぜ、おごってやるからよ」
「僕まだ未成年!」
「あー?しゃーねえなあ、だったらミルクでも飲んでろよ」
や
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