鎌鼬
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を抱きしめる。薄暮の海岸は、濃い霧に覆われている。弟はこの霧の向こうに△△△が、弟達を再び奪うために黒々とした口を開けて待っている…という。
大丈夫、俺が皆を守るから。なかなか良い×××××を、あつらえてくれた。苦労しただろう、こんなに立派な。
そう云って、 の背を撫でる。あの男…。もう誰一人殺させない。あいつを殺して、その骸を… に、還す。だってこれはお前のものだもの。大丈夫、大丈夫。腕の中で泣きじゃくる を抱えて、俺は再び決意する。
今度こそ、あの男をこの手で仕留める。俺は忘れない、丸め込まれない。
目が覚める程の、文字通り目が覚める程の殺意に俺は跳ね起きた。
口元に微笑を湛える飛縁魔が、様子を見るように俺の背後に回り込む。…今は、どうでもいい。俺が起きた気配を察してか、麦茶を運んでくれたきじとらさんは咄嗟に、俺の前に出た。…奉を、守る気なのか。胸の奥にくすぶる、殺意以外の感情がちくりと疼いた。だけどいまはどうでもいい。俺にも大切な者が居る。弟たちが怯えている。
俺は、匕首を構えて喉元に飛びかかってきた彼女の背後に潜り込み、本の壁に叩きつけた。
「…成程ねぇ…」
奉がゆらりと立ち上がり、見たこともないような嗜虐者の貌で俺を覗き込んだ。奉は知らない、弟たちが死ぬ思いで俺にあつらえてくれた×××××を。油断している。今の、奉なら。
俺は『願う』だけで奉を殺せる……!!
――― 一陣の突風に煽られ、目が覚めた。
すとん、と心が軽くなっている自分に気が付いた。俺は、いや『彼ら』は目的を達成したのだ。手に取るように分かる。そして『彼ら』が俺に見せていたまやかしの風景も、全て分かる。
本の陰に身を隠して警戒している飛縁魔、そして悲鳴をあげながら奉に駆け寄るきじとらさん。…俺はさっき、きじとらさんに何をした!?いや…俺は…奉に何をしたんだ!?
切り刻まれた本の壁、その中央に奉が立ち尽くして居た。
煙色の眼鏡が、ひしゃげてカキン、と音を立てて床に転がった。
「ま、奉…」
駆け寄ろうとして、たたらを踏んだ。きじとらさんが、親の仇を見るような目で俺を見ているから。…いや、俺の背後か!?
「私は、馬鹿でした…」
食いしばった歯の奥から絞り出すように、彼女が呟いた。…やめてくれ、その先を俺に聞かせるのは。
「…あの時、ひるんでしまった私は、馬鹿でした!あの時」
す…と右手を差し伸べて奉がきじとらさんを制した。俺は…震えていたのだろう。奉が2重に見えるのだから。奉は、にやりと笑って俺の…背後を指さした。
「そこにいたのか…鎌鼬」
鎌鼬!?
咄嗟に振り向いた俺の背後に渦巻く小さな竜巻。その中央に俺は、蠢く3頭の獣を見た。細く長いそれは竜巻のように絡み合い、俺
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