暁 〜小説投稿サイト〜
霊群の杜
鎌鼬
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多にないことなんだが…最近、ここいらの鎌鼬に異変が生じている」
「ここいらにかまいたちがいるとかもう何云ってんだメンヘラかよって感じだが、どんな異変だよ」
―――ほんとひでぇ。
「離散している」
きじとらさんが差し出した麦茶を呷り、奉は息をついた。
「風、鎌、薬の鎌鼬が離散し、再結合している。薬、風、薬やら、風、鎌、風やら」
「で?俺のズボンをべとべとにしていく奴は?」
「薬、薬、薬」
―――なんだそりゃ。
「じゃ、これ薬かよ?」
「切り傷くらいならすぐ塞がる。とっておくといい」
「ちょっとまてよ。三位一体なら風、鎌、薬の数は同じなんだろう?」
薬役の鎌鼬がつるんで活動している、ってことは。俺は…猛烈に厭な予感がする。
「ここらへん最近、しつこいつむじ風が起こるだろう」
奉は徐に大福に噛みついた。…何だ、しつこいつむじ風って
「風、風、風か、風、風、薬…がいるねぇ」
「あれもお前関連か、玉群!」
「へぇ、遭ったんだねぇ」
「やめさせろよ、荷物運んでるときに危ねぇんだよ」
「俺が飼っているのではないからねぇ…」
「待て、もっとやばい組み合わせがあるだろ」
大福を飲み下しながら、奉はちらりと顔を上げて俺を見た。また、煙色の眼鏡の奥が分からない。
「……それな」
面倒なことになるねぇ…と奉が呟きながら、猫のように体を丸めて机に伏した。
「鎌の、数が足りないんだよねぇ」
「………うっわ」
鴫崎が肩を抱えて震え上がった。こいつは郊外活動の草刈りの時、こっそり持ってきた鎌を振り回して『蟷螂拳!!』とかふざけて二の腕をザックリやって以来、鎌に軽いトラウマがあるそうだ。
「一頭でも『薬』が居れば問題はないが、風、鎌、鎌とか」
肩をすくめて、奉が声を潜める。
「鎌、鎌、鎌…だともう最悪、死人が出るねぇ」
死人…などと物騒なことを云い捨てて、奉は再び本に没頭しだした。今日は『重い本』は紛れていないらしい。やばいねぇ、面倒なことになったねぇ…などと呟きながらページを繰る。考え事をしながら本も読めるのか。
「やべ、配達の途中だった」
カップヌードルを4つ抱えて走る鴫崎を追って、俺も洞を出た。





向日葵咲きそめし玉群の石段を、今日も登る。俺の傍らを歩いているのは、今日は鴫崎ではない。
「…変な石段ね」
飛縁魔が傍らで苦笑する。…あれから2週間、かつては小さく首をもたげていた背の低い向日葵が、石段の両側をびっしりと覆い尽して咲き狂っていた。
「姪っ子の小梅がテレビのCMで向日葵畑を観てね…えらく気に入ったみたいで、奉にねだったんだよ」
「そんな理由で?あの無精者が石段の上から下まで種を蒔いたの?」
折角の居場所を追い出されたせいか、彼女は小梅が少し苦手らしい。というか純粋無垢な幼子全般に、軽い
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