イボウンデーの帰還
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俺は今日も途方にくれていた。
―――俺の四畳半で。
それは先日の午後のことだった。
「私、オ盆ノアイダ祖国ニ帰還スルコトニナッタヨー」
同じ大学に通うイポウンデー皇太子と、夏休みのプランなど話し合っていると、そんな話が出た。
「…ほう、お盆中は瀬戸内海の実家に帰ると」
こいつの祖国イポウンデーは瀬戸内海にある、外周10キロの小島である。南セントレアみたいなものだと思えば間違っていない。
「丹沢ハ実家ニ帰ル??」
「ん?俺は山梨だしなぁ…今回はいいや、こないだ帰ったばかりだし」
云い終わるや否や、皇太子は目を輝かせて身を乗り出してきた。
「予定ナイナラ私ノペット預カッテヨ!」
「え、嫌だよ俺くそ狭いアパートだし」
「頼ムヨ丹沢、ウチノハムスター、可愛イヨ!」
…む、ハムスターか。
実を云うと俺は小動物に目がない。今の下宿は基本的にペット禁止だから泣く泣く諦めたが、本当はちっちゃくて可愛いやつが飼いたくて仕方ない。そこに来てハムスターを預かれという話。俺はもう内心涎が出そうだったが、努めてクールに座り直した。
「…一頭か」
「ハムスター、多頭飼イスルト喧嘩トカ共食イスルヨー、常識常識」
「何日間だ」
「4〜5日デ帰ルヨ」
…っち、たった4〜5日か…
「…仕方ないな。今回だけだぞ」
「アリガトウ!丹沢頼レルネー」
そんなやり取りがあり、いよいよお盆が近づき、ワクテカしながら下宿で体育座りで待っていたら
なんか数人のポリネシア系の男たちが、直径2mの回し車を抱えてやってきた。
「……ん?ん?」
半笑いで固まる俺の前で、男たちは黙々と回し車を設置する。そして流木のような腕に血管を漲らせて「フンッ」とか呟きながら回し車を回し、何か納得したような顔で頷く。
「……え?何?」
次に飼葉桶みたいなやつを2〜3個担ぎ込み、ドラえもんに出てくる感じの土管を転がし、バスタブに砂を溜め、とどめに大量の干し草を床に撒き始めた。ちょ…なにこれ、あいつハムスターとか云ってたけど何か、カピパラでも押し付ける気か!?
「イポウンディアン・ハムスターヲ頼ムヨー」
謎の品種名と共に、仔馬くらいあるネズミが俺の四畳半に放たれた。
俺は慌てて携帯に飛び付き皇太子の大馬鹿野郎に連絡を入れたが、あの野郎生意気にも飛行機で移動しているらしく、携帯が繋がらない。悄然と携帯を置いて振り向くと、俺の背後に
俺の背中をじぃぃ…と見ている巨大げっ歯類が居た。
以来俺は皇太子に鬼電を入れまくったのだが、あの馬鹿皇子は飛行機から降りても機内モードを解除し忘れていたらしく、ようやく電話が通じた頃には翌日の夜になっていた。
『ヨ、丹沢ー。元気ネー』
「元気ねー、じゃねぇよ
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