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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十四話 キュンメル事件(その2)
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同盟の主戦派が力を増す、戦争に持って行きやすい。
そして地球教の弾圧も考慮に入れただろう。地球教は同盟にも根を張っている。弾圧すれば大勢の信徒が同盟に行くだろう。そして帝国が地球教を弾圧している、信教の自由など認めていないと声高に騒ぐに違いない。
そこから見えてくるのは、地球教への同情だ。そして地球教のスローガンが同盟領内で唱えられるだろう。“地球は我が故郷、地球を我が手に”。反帝国感情は燃え上がり、主戦派が力を増す。行き着くところは戦争だ。
俺の想像を聞いたフェルナーは厳しい表情をした。地球教が厄介な敵だと言う事が改めて理解できたのだろう。そろそろ同盟にも地球教の事を話すべきだろう、今回のフェザーンでの紛争は向こうにとっても肝が冷えたはずだ。疑問には思っても荒唐無稽と否定はしないはずだ。爺様連中に許可を取る必要があるな……。
「アントン、イゼルローン要塞に行ってくれないか。リヒテンラーデ侯、エーレンベルク、シュタインホフ元帥には許可を取る」
「地球教の事を同盟に知らせるという事か」
「同盟と言うより、ヤン・ウェンリー提督に地球教の事を話して欲しい」
フェルナーが面白そうな顔をした。ヤンに会えるのが嬉しいのかもしれない。何と言ってもイゼルローン要塞を落とした男だからな。
「話すだけで良いのか?」
「軍上層部、政府にも伝えて欲しいと言ってくれ。地球教にどう対処するか、その答えは捕虜交換式で聞くと。調印式には私が行くつもりだ」
どんな答えが返ってくるか、それによってヤンがどの程度政府、軍上層部に影響力を持っているかが分かるだろう……。
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